20年以上にわたりカルト集団を取材し続けている鈴木エイト氏。「日の目を見ない問題を地道に取材してきた孤高のジャーナリスト」などと紹介されることに違和感があると言う。取材や情報発信の際に怒りや情熱をあまり前面に出さないというエイト氏に対し、ひろゆき氏が「モチベーションは何か?」と聞いたところ、二人の意外な共通点が見えてきた――。(第4回)

かつてカルト宗教の取材は命がけだった

——エイトさんは20年以上、カルト団体の取材を続けてきて、相当なリスクを負っていると思うのですが、身の危険を感じたりはしないんですか?

【エイト】今日も変なメッセージが来ましたよ。鍵垢(非公開アカウント)で「あなた、紀藤(正樹弁護士)、有田(芳生)は結構ヤバめの武闘派団体から狙われとるで。お互い用心しましょう」と。取りようによっては脅迫っぽいですよね。

【ひろゆき】実際に海坊主風の男に刺された事件などもありましたからね。

そういうことがあっても、エイトさんは活動を控えようとは、ならないんですか?

【エイト】でも、おそらく80年代にカルト団体を追いかけていた人たちはもっと危険だったと思うんです。ジャーナリズムを暴力で抑えようとする動きが、いまよりも激しかったので。

実際、世界日報の一部の人が統一教会の暗部を暴こうとしたため、その動きを抑えようと、現在の勝共連合会長の父親の梶栗玄太郎らが世界日報の本社を襲撃した事件や、世界日報の元編集局長・副島嘉和氏が路上で全身をメッタ刺しにされた事件もありました。その後、89年にはオウム真理教による坂本弁護士一家殺害事件などもありましたからね。

そうした時代に命がけで取材していた人たちに比べると、多少気楽にやっているところはあるんですよね。さすがに命までは取られないだろう、と。

【ひろゆき】その頃に比べたら。

【エイト】先人の積み重ねのおかげというか。今回、ある程度有名にならせてもらったので、逆にそういう点では以前よりは安心かなと。

エイト氏を殴った勧誘員は10年後、教団イベントで歌っていた

【エイト】自宅では一応、防犯カメラを設置してずっと撮っているんですが、たまに変な人は来ますね。政治家の追及をしていたときは、カメラでこちらを隠し撮りしている人が何人もいたり。だから、地元の警察署にはずっと重点的にパトロールしてもらっています。

【ひろゆき】エイトさんは、そういうことをリスクだとは思っていないんですか?

【エイト】嫌ですけどね。ただ、それで活動をやめようとは思わないです。殴られたこともありますしね。

【ひろゆき】そうなんですか?

【エイト】血気盛んな勧誘員がいて、少し揉めたときに殴ってきたので、これでこいつを現行犯で捕まえられる、ラッキーと思って追いかけたんです。

【ひろゆき】はい、はい(笑)。

【エイト】渋谷だったんですが、駅の周りを3周ぐらい追いかけて。途中でだんだん楽しくなってきて、わざとスピードを緩めたりして。

【ひろゆき】どこまで逃げるのか、みたいな。

【エイト】それで取り押さえて組み伏せたんです。でも、反撃されて、結局逃げられてしまって。

【ひろゆき】さすがにもう現れないでしょうね。

【エイト】じつはその勧誘員は、旧統一教会が摘発を受けた2009年の新世事件の時に新世のメンバーだったんですが、その時は逮捕されなかったんです。その後、あの勧誘員はどこに行ったのかなと思っていたら、2019年に細田博之さんたちが出席した愛知県で開催された大規模イベントの4万人集会のステージで歌っていました。

【ひろゆき】幹部になっていたんですか?

【エイト】いや、大勢で歌っているおじさんコーラス隊の1人でした。俺を殴ったやつがここにいたと驚きました。

【ひろゆき】教団に居続けたんですね。

【エイト】そうなんです。アゴが特徴的な人だったので、10年越しでもわかりました。

【ひろゆき】感動の再会(笑)。

【エイト】感動はないんですが(笑)。

オンラインで対談するひろゆき氏(左)と鈴木エイト氏(右)(2022年9月9日)
オンラインで対談するひろゆき氏(左)と鈴木エイト氏(右)(2022年9月9日)