長谷川閑史●武田薬品工業 代表取締役社長。1946年、山口県出身。70年早稲田大学政治経済学部卒業後、武田薬品 工業に入社。その後、ドイツ武田、タケダ・ヨーロッパに出向。95年米国のTAPホールディングス社長。98年医薬国際本部長、99年取締役、2001年 取締役経営企画部長などを経て、03年より現職。経済同友会代表幹事。

今は、得意分野の製品開発に特化した“ブティック型”が増えてきているが、研究開発組織が乱立し、大手メーカーはそれらと業務提携する形を取っている。しかしながら、これでは「新薬」という果実の一人占めはできず、それぞれの会社は、そこそこの分配に与るしかない。

ファイザーやロシュのような巨大企業は、そのような“薄利”では生き残れないし、タケダも同様である。だから、今後はブロックバスターでホームランを狙うのではなく、“ミニバスター”と呼ばれる、売り上げ100億円規模の薬の開発で、売り上げを積み上げる戦略に舵を切りつつある。さらに世界各国に販売チャネルを拡大し、新興国など未開拓の市場を狙っているのだ。

「何もしないリスクより、前に進むリスクを取れ」「思い描くグローバル企業には50%にも到達していない」

と長谷川はいうが、タケダという企業におけるグローバル化の裏に透けて見えてくるのは、日本の行く末そのものだ。ナイコメッド買収で、タケダは新興国市場を攻めることができるのか。タケダから真のグローバル人材は、誕生するか。タケダの挑戦は、日本の挑戦なのだ。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(川本聖哉、宇佐見雅浩=撮影)