大阪都構想では住民投票を行うのにカジノではしない

松井氏が維新の代表を降りることにあえて肯定的な意味を見出すとしたら、前述したように、代表が「大阪の首長」から「国会議員」に移ることによって「地域政党が国政にかかわる」いびつな状況を改め「普通の国政政党」となることだっただろう。

維新は「大阪府と大阪市で行政の長を務めている」ということを強調することで「国政でも政権担当能力がある」とアピールしてきた。松井氏や吉村洋文大阪府知事が、コロナ禍などで行政トップとして東京のメディアに取り上げられることで、こうした印象操作はある程度機能した。参院選の応援演説で使われた「大阪の改革を○○でも」というのは、まさに「大阪でまともな行政をやってきた維新」という印象操作そのものだ。

一方で、大阪の行政が実際にどういう状況なのかは、東京のメディアではまともに取り上げられない。コロナ禍で大阪府の死者数が、人口比で全国的に突出したことなどは「知る人ぞ知る」状況になったが、維新の政治のおかしさはそれだけではない。この代表選のさなかだけでも、維新の政治姿勢にはいくつもあ然とさせられた。

例えば、カジノを含む統合型リゾート(IR)施設の大阪誘致をめぐり、その是非を問う住民投票を実施するための条例案を、大阪府議会が大阪維新の会などの反対多数で否決したことだ(7月29日)。条例案は大阪市の市民団体が、条例制定を求めるのに必要な人数を上回る署名を集めて府に直接請求したのだが、吉村洋文知事は議会提出の際に「住民投票を実施することに意義を見いだしがたい」との意見書をつけた。

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写真=iStock.com/ViewApart
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ちなみに、吉村知事は今回の代表選を経て、日本維新の会の副代表から共同代表に「昇格」している。

大阪都構想のように自らが推進したい施策のためには、住民投票で一度否決されても2度目を行う(これも否決)くらいに熱心に「住民の意見を聞こうとする」のに、自らが進めたい施策にとって不都合な場合は、こうやってあっさりと住民投票条例案を否決させる。見事なダブルスタンダードである。

議会軽視の専決処分を乱発

まだある。大阪府がコロナ禍や物価高の影響を受けている事業者らを支援するため、総額約31億円の補正予算を専決処分したことだ(8月24日)。

いくら緊急性が高い予算だったとしても、議会の承認を得ずに、行政が勝手に予算を決めてしまうのは議会軽視であり、ひいては背後にいる住民の軽視だ。補正予算には「大阪の魅力を海外に発信するプロモーション事業費約1億6000万円」なども計上されており、緊急性も疑わしい。いくら府議会で維新が圧倒的多数を占め、可決が確実だったとしても、議会できちんと審議すべきではなかったのか。

専決処分は最近、大阪府だけでなく、東京都などでも乱発されているが、コロナ禍で麻痺してしまったのか、最近はメディアもあまり問題にしない。2010年ごろ、鹿児島県阿久根市で市長が議会を開かず専決処分を乱発して全国的な大問題になっていたことが、今では嘘のようだ。