松井氏は本来代表を辞任する必要はなかった

維新は、国政選挙か統一地方選の後に「代表選を実施するかどうか」を党大会で決める、という独特のシステムを持っている。直前の選挙結果をその都度評価し、代表を代えるべきか否かを毎回確認する、という意図なのだろう。昨秋の衆院選の際は、議席が公示前より大きく増えたこともあり「代表選の必要なし」となった。

参院選を終えた今回も、本来なら同様の評価にするのが筋だろう。維新は参院選でも議席を倍増させた。野党第1党への足がかりとして掲げた「比例票で立憲を上回る」目標をクリアした。松井氏に引責辞任する理由はないし、むしろすべきではない。

ところが松井氏は、参院選の投開票日の7月10日、開票作業を最後まで見守ることもなく辞意を表明した。松井氏の独断による辞意表明によって「やらなくても良いのにやることになった」代表選は、最初から最後まで「主役」の3候補以上に、松井氏自身にスポットライトが当たり続けた。

辞意表明の段階で「自民党が圧倒的に強かった。負けを認めざるを得ない」と述べ「敗軍の将」の如く振る舞っていた松井氏は、代表選を終えた後はころっと言いぶりを変えた。馬場氏とともに記者会見に臨んだ松井氏は、改めて心境を問われると「政治の源泉は怒りだったが、大阪市役所や府庁の体質も変わり、今は怒ることもない。だから(政治にかかわるのは)終了」と満足げに語った。

参院選の投開票日の発言は、一体何だったのか。まるで花道を堂々と引き上げるかのようなその姿に、筆者は強い違和感を覚えた。

代表選で浮き彫りとなった自民並みの古臭い体質

この間の松井氏の言動を振り返ると、だいたいこんなところだろう。

どういう理由か知らないが、松井氏は単に「代表を辞めたくなった」自己の都合のみで、勝手に代表選を発生させた。そして、代表という「表」の場から姿を消しても「裏」で影響力を保持できるよう、後任の代表選びには深く関与した。自らの「傀儡」として馬場氏を出馬させ、事実上の「後継」に指名したばかりか、立候補の動きをみせた他の議員の出馬を表だってけん制し、結果として出馬断念に追い込んだ。

キャッチャー
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松井氏は今後、党代表という「表」の立場で当然担うべき責任から逃れ、馬場氏を通じて党内に隠然とした影響力を行使することが可能になる。

こういう政治は、前述した「田中曽根政権」や、岸田政権に裏で影響力を及ぼそうとした安倍派と、全く同根ではないか。何のことはない、自民党を含む既存の政治を「古い体質」だと口を極めて罵ってきた維新の党内政治の姿は、実は自民党並みに古臭かった。

そんな維新の体質を改めて露呈させたのが、今回の代表選だったと筆者は思う。