未明にかけての電話で金銭感覚を罵倒され続ける

2020年10月2日付のハーバー・ビジネス・オンライン記事「TOSHIの『洗脳』で話題になったホームオブハートの今。TOSHI脱会後も、名前を変えて活動」より、そのセミナー内容を一部紹介する。

有名なものに、「フィードバック」という手法がある。受講生の発言等について、否定的な内容で受講生を罵倒する「ネガティブ・フィードバック」と、肯定的な内容で褒めちぎる「ポジティブ・フィードバック」を繰り返すのだ。

自分が他者からどう見られているかを見つめ直す、といった名目で行われるが、実際には数日間に及ぶ缶詰状態でのセミナーが、「つらかったが感動的な体験」として刷り込まれるという側面がある。

また、夜中の2時や3時にまで及ぶ個人電話で受講生の金銭感覚を罵倒し続ける「マネートレーニング」といわれるようなフィードバックも行われ、受講生たちは睡眠時間を削られながら、借金を奨励され続けた。

脱会した母親から離された子どもたちが経験したこと

ホームオブハートについては、脱会した女性たち(多くが子連れで入会)から、「我が子を返してほしい」との相談が紀籐正樹弁護士に寄せられた。そこで、紀藤氏が栃木県の児童相談所に通報したところ、ホームオブハートは紀藤氏を名誉棄損で「逆訴訟」したという事件があった。

『デッドプール2』ジャパン・プレミアのレッドカーペットにてXポーズをするToshl
『デッドプール2』ジャパン・プレミアのレッドカーペットにてXポーズをするToshl(写真=Dick Thomas Johnson/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

そこで、紀藤弁護士を支える「弁護士の会」と「市民の会」が結成され、私は「市民の会」の代表となった。

母親から離された子どもたちは、段ボールに入れられる、就学年齢の児童が学校に通わされていないなど、劣悪な環境のなかにいた。子どもたちは、大人たちがセミナーの中で怒鳴り合ったり泣き叫んだりしている側で放置され、あるいは一緒にセミナーを受けさせられていたという。なかには、当時すでに16歳にもなる少女もいて、彼女は裁判後もそのままホームオブハートに残った。

2010年にToshlが脱会した後、裁判は和解が成立。メディアでの目立った報道はなくなったが、ホームオブハートは関西に拠点を移し、MASAYAはMARTHと芸名を改めて、現在もセミナーや健康グッズ販売、ヒーリング音楽販売、リゾート会員権販売などを続けている。

親のカルト集団への入会で、子どもが満足な生活を得られない環境におかれた本件も、まさにカルト集団による児童虐待の事例であった。