飲料水や食品をストックしておくと安心

――万が一の感染に備えて、やっておけることはないでしょうか?

これだけ新型コロナが増えると、自治体からの救援物資が遅れることも多々あるようです。ですから、少なくとも数日分の飲料水やレトルトなどの食品を用意しておくと安心でしょう。新型コロナになると喉が痛くなり、なかなか食事をとることができない人も多いようですから、喉通りのよいゼリーやおかゆ、麺類などを用意しておくと、いいかもしれません。風邪の時の備えにもなりますね。

――血中酸素飽和濃度を測るためのパルスオキシメーターは必要でしょうか?

新型コロナになると、自治体からパルスオキシメーターが送られてくるところが多いですが、食料と同じく遅れることがあるようです。ですから、必需品とまではいきませんが、受診の目安や安心材料にするために、子供用のプローブが付替できるパルスオキシメーターを用意しておくといいかもしれません。なお、血中酸素飽和濃度は98以上が正常で、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症診療の手引きでは、96%以上が軽症、93〜96%が中等症I、93%以下が呼吸不全で中等症II、および重症です。これを参考に、保健所やクリニックに数値を伝えて相談するといいでしょう。

発熱外来に備える森戸やすみ先生
撮影=大西まお
発熱外来に備える森戸やすみ先生。陽性者が出ると、全て廃棄して着替え直す必要がある。

家庭での抗原検査に意味はあるのか

――家族の人数分の抗原検査キットも用意しておくと安心だといわれていますが……

私は、抗原検査キットは各家庭にはそれほど必要ないと思っています。一つには、市販の抗原検査キットのなかには、正確な結果が出ないものもあるからです(※3)。また、たとえ信頼性の高い検査キットを使ったとしても、検査しなれていない人が唾液や鼻腔びくう拭い液など検体の採取を行うと正確な結果が出ない恐れがあります。そうして本当は陽性なのに陰性になった人が安心して出歩くと、感染が広がってしまうでしょう。また検査した時に陰性でも、その直後には感染して陽性になっているかもしれません。検査=安心ではないんです。

――確かにそうですね。国や自治体が検査キットを配っているのはなぜでしょうか。

うーん、なぜでしょうね。検査キットが入荷しないという時に、国や自治体が検査キットをたくさん無料配布していたのでハラハラしました。自宅で検査して陽性だとわかっても、オンラインで申請できるのは東京都では現在、20〜40代までです(※4)。それよりも「新型コロナかも」と思ったら、どう行動・受診するべきかをもっと広く知らせることのほうが、ずっと感染拡大防止効果があると思います。

※3 プレジデントオンライン「『中には無意味なものもある』内科医が教える“使えるコロナ検査キットとダメな検査”の見分け方」(2022年5月1日)
※4 生年月日が1972年4月2日~2003年4月1日の人が対象。