新型コロナ感染とワクチン接種率

――新型コロナウイルスに感染している子供たちのワクチン接種率は、どのくらいなのでしょうか?

第7波がきてから新型コロナに感染した子供たちにおけるワクチン接種率がどのくらいなのかは、まだわかっていません。ただ、新型コロナワクチンは子供の場合でも感染や重症化を防ぐという確かなデータはありますから、おそらく感染者における接種率は高くないだろうと思います。そもそも日本では5歳未満は新型コロナワクチンを接種できませんし、またそれ以上でも接種率が低いのが特徴です。うちのクリニックのある台東区の接種率は2割弱くらいで、おそらく近隣の区もそのくらいでしょう。政府の発表によると日本全国では、やはり2割弱、秋田県が45%で、大阪府が7%です。

――森戸先生のクリニックでは、どうでしょうか?

実際、うちのクリニックで新型コロナ陽性となった子供のほとんどはワクチン未接種でした。どうしてわかるのかというと、保健所に新規感染者の届け出をする際に、新型コロナワクチンの接種の有無、いつ受けたかを私が書く必要があるからです。7月の新規感染者は42人、ワクチンを受けているのは1人だけでした。とても少ないですね。「うちの子は一度、新型コロナに感染したからもう打たなくていいかと思っていた」という保護者がいますが、2回目の感染という子も数人います。

通常の外来時間に、熱のある患者さんが入らないよう注意書きのある入り口
撮影=大西まお
通常の外来時間に、熱のある患者さんが入らないよう注意書きのある入り口。

大切な子供を感染から守るためには

――この爆発的な感染のなか、どうしたら子供を守ることができるでしょうか?

まずは、先日「努力義務」になると発表された新型コロナワクチンを接種してください。すでに感染していたとしても、治ったらすぐに接種することをおすすめします。厚生労働省によると、新型コロナウイルス感染症にかかった後の3カ月は感染しづらいとされていますが、すぐに再感染してしまうリスクは否定できません。また次にかかったときに軽症で済む保証はありません。もしも大事なお子さんが重症化したら……きっと接種しておけばよかったと考える方が多いだろうと思います。

――保護者のなかには「新型コロナワクチンの長期的な影響がわかっていないからこわい」「新型コロナワクチンを接種していない子も多いし、様子をみたい」という方もいるようです。

お子さんに何か悪い影響がないか、心配になる気持ちはよくわかります。でも、新型コロナワクチンは既に世界中のたくさんの子供が接種していますし、新型コロナウイルスに感染したほうが短期的にも長期的にも影響が心配です。苦しい思いをするだけでなく、後遺症もあるし、最悪は亡くなるからです。それに小児用の新型コロナワクチンの接種期限は今年の9月30日まで。延長される可能性が高いと思いますが、いずれにせよ早めに打っておいたほうがいいでしょう。

なお、常に慎重な姿勢の日本小児科学会も「健康な小児へのワクチン接種は『意義がある』という表現から、『推奨します』という表現に変更する方針」と明言し(※3)、WHOも「子供から高齢者への感染を減らし、教育現場での感染予防対策を減らすことができる」としています(※4)

※3 日本小児科学会「5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方
※4 WHO「Interim statement on COVID-19 vaccination for children