オミクロンBA.5は子供の感染者を増やし、全国のさまざまな地域の小児科の発熱外来が大混雑している。子供を守るために、今、親が知っておくべきことは何か。小児科医の森戸やすみさんに聞いた――。(聞き手・構成=大西まお)
COVID-19のため学校で体温測定
写真=iStock.com/Tomwang112
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今、小児科外来が混雑している理由

――小児科の外来が大変混雑していると聞きます。森戸先生のクリニックは、今どんな状況でしょうか?

毎日、これまでにないほど混雑しています。朝の30分で、その日の発熱外来の予約枠が埋まってしまうほど。全国的にも大小たくさんの医療機関の小児科が同じ状況だと思います。これは「新型コロナウイルス感染症」の子供が増えているだけでなく、その他の感染症も流行しているためです。高熱と咳が続く「ヒトメタニューモウイルス」、同じく熱と咳が出る「RSウイルス」、熱と発疹が出る「手足口病」も多く、どれも最初に熱だけが出ると新型コロナと見分けがつきづらく、鑑別に手間がかかります。

――昨年の夏も、本来は冬にはやるはずのRSウイルスが流行しましたが、今年も同じような状況なんですね。

そうですね。ただ、国立感染症研究所のウェブサイトを見ると、RSウイルスの流行は去年ほどではありません(※1)。手足口病も増えてはいますがコロナ禍前よりは少ないし、ヒトメタニューモウイルスは定点観測をする感染症ではないのでわかりません。今、初めて子供の新型コロナウイルス感染者が爆発的に増えたのと同時に、いろいろな感染症の患者さんが同時に発熱外来を訪れるので、大変なことになっているのだろうと思います。これらの感染症のなかで、ワクチンがあるのは新型コロナだけで、罹患りかんして大きく行動制限が必要になるのも新型コロナだけなんです。

※1 国立感染症研究所「RSウイルス感染症 定点当たり報告数

クリニックで通常の診察にのぞむ森戸やすみさん
撮影=大西まお
クリニックで通常の診察にのぞむ森戸やすみさん。

――実際に子供の新型コロナウイルス感染症は増えているのでしょうか?

残念ながら、非常に増えています。新型コロナの「オミクロン株亜系統BA.5」が流行しはじめてから、子供の感染者が急増しました(※2)。こうして子供全体の感染者数が増えれば、入院が必要になったり、重症化したりする子供も増えてしまいます。分母が増えるから、分子も増えるんですね。さらには長引いたり、脳症になったり、深刻な後遺症が残ったりするリスクもあることがわかってきました。今年3月以降にすでに累計で21人の子供が亡くなっていて、基礎疾患のない子供もいます。

【図表1】性別・年代別陽性者数(累積)/性別・年代別重症者数
画像=厚生労働省

※2 厚生労働省「データからわかる―新型コロナウイルス感染症情報―」