3D世界が広がると、「知的能力」も変わる

私の仕事は「まだ見えていないものを見る」ことだと言いました。そのためには、「最先端技術の動向」に着目するのも方法ですが、むしろ、「人間の心がどこに向かうのか」を考えることが大切です。人間の心が何かを欲するようになれば、技術はあとからついてくる。

だから映画「アバター」を見たとき、想像力が非常に刺激されました。ビジネスとしての3Dの可能性に興奮したわけではありません。3Dの世界にここまでのリアリティを感じられるのなら、次に何が起こるのか、それが、我々の意識にどのような影響を及ぼすのかを考えたからです。

たとえば、巨大な鳥(イクラン)に乗って飛び回るシーンでは、観客も鳥の背中にしがみついて空を飛ぶ感覚を体験できる。これは現実世界ではありえないこと。だからおもしろい。我々が求めているのは、じつは、バーチャルな現実ではなく、リアリティのある虚構、リアル・バーチャリティだと気づくからです。

これは大きな意識革命になるでしょう。数年内に、パソコンで同じようなことが体験できるようになる。それに伴い「知的能力」の定義も変わる。ゲームばかりやっている子どもたちも、じつは何かの能力を身につけている。今は評価されなくとも、それが大切な意味を持っていることに気がつくときがくるでしょう。

※すべて雑誌掲載当時

(梶山寿子=構成 堀 隆弘=撮影)