身分確認不要で会員数を伸ばした結果、犯罪が多発

他のアプリと違って本人確認をする必要がない人参マーケットは、携帯電話の番号を入力するだけというシンプルな加入手続きで会員を急増させた。もっとも、身分確認が不要という死角だらけの空間では犯罪も多発しやすい。

金敬哲『韓国 超ネット社会の闇』(新潮新書)
金敬哲『韓国 超ネット社会の闇』(新潮新書)

21年9月には、50代の男性がこのアプリで知り合った出品者を呼び出し、殺害してしまう事件も発生した。犯人は、1000万ウォン相当の金を売ると書き込んだ30代の男性を空き地に呼び出し、ナイフで刺して殺害。その後、金の延べ棒を持って逃走したが、警察によって逮捕され、懲役28年の刑が確定している。

21年11月には、「無料出品」コーナーで性犯罪が発生している。犯人は「家電を無料で譲る」という書き込みをして希望者を募集。宅配のためと聞き出した住所を使って若い女性の自宅を訪れては、わいせつ行為を繰り返した。

ほかにも、ブランド品のかばんを安く売ると嘘を言い、80人余から1億ウォンを騙し取った事件や、iPadを販売するという小学生に大人が数万ウォンをだまし取られた事件など、このマーケットで起こる事件が韓国のニュースで取り上げられるのは日常茶飯事となっている。

オンライン中古取引での詐欺件数は右肩上がり

「国民の力」の議員が公開した警察庁の資料によると、オンライン中古取引で起こる詐欺の件数は、18年に7万4044件だったのが、19年に8万9797件、21年には12万3168件と増加傾向にある。ところがそういった詐欺の犯罪検挙率はというと、16年に90.5%だったものが21年には76.1%に低下。まさに犯罪天国の様相を呈している。

人参マーケット側は、このような詐欺取引を防ぐため、お金を先に振り込むのではなく、販売者と購入者が実際に顔を合わせて商品と引き換えに金銭を振り込むシステムなどを導入したが、実効性は不確かである。冒頭で触れたように「人参」とは韓国語で「あなたの近く」という意味の言葉だが、皮肉にも消費者の身近な場所で犯罪が発生する原因にもなってしまっている。

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