輸入頼みの日本への打撃は避けられない

水資源をめぐる国と国の対立も先鋭化している。中国共産党政権は、南部を流れるブラマプトラ川の上流などでダムや水力発電所を建設しようとしている。それに対してインドが反発している。世界全体で電力と水の供給はかなり不安定に推移するだろう。各国企業が半導体や自動車、食糧などの生産を短期間に増やし、需要を満たすことは難しい状況が続く。エネルギー資源や穀物などを輸入に頼る国は、より強い逆風に直面するだろう。

そうした制約で企業業績は悪化し、景気の減速懸念が高まることが考えられる。米国などでは、FRB(連邦準備制度理事会)の追加利上げによって企業の資金調達コストは増える。資源価格の高騰などによるコストプッシュ圧力も強まり、生き残りのために雇用削減に追い込まれる企業は増えるだろう。電力料金がさらに上昇すれば、よりコストの低い国に生産拠点を移さざるを得なくなる企業が増える。

電力消費の多いアルミの精錬などを続けることが難しくなり、産業構造が大きく変わる国も出てくるはずだ。電力と水の不足が、世界経済に与える負のインパクトは大きい。内需が弱く交易条件が悪化するわが国において、企業業績が急速に悪化する懸念が高まっている。

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