いわゆる「ワニの口」論はウソである

また、いわゆる「ワニの口」論にも注意が必要だ。

「ワニの口」とは、日本の税収と歳出の差が年々拡大しており、グラフ化すると、ワニが口を開けたように見える、というものだ。

【図表1】バイアスのかかった典型的な「ワニの口」の歳出と歳入の乖離

しかし、この「ワニの口」論には少々注意が必要だ。

そのことを明らかにしたのが、「経団連報告書」の第2章に収録された、会田卓司氏の論考である。

その内容を簡単に説明すると、以下のようになる。

日本政府は、いわゆる「60年ルール」に基づいて、国債残高のうちの数%を毎年償還(返済)している。

ただ、これはあくまで形式上の措置で、実際にはその大半は代わりに国債を発行して、借り換えを行っている。

また、その返済費用を、一般会計の「歳出」に計上している。

しかし、「借り換え」のために国債発行した分は、「歳入」に計上されていない。

そのため、毎年の「国債償還費」の分だけ、歳入と歳出のギャップが広がって見えてしまうのだ。ほとんどの国でこのような歳出ルールは存在しない。

このギャップが積もり積もったのが、「ワニの口」だというのである。