「借金を残すな」は「資産を残すな」と同じ意味

積極財政の主張への主要な批判は、日本の財政状況は悪化を続けており、これ以上の財政支出は財源の点で不可能であるというものになるだろう。

しかし、この主張にはいくつかの見落としがある。

日本国債の多くは、金融機関や家計、そして日本銀行といった、日本国内の経済主体が保有しており、保有者にとって国債は資産である。

そのため、財政再建のスローガンとして用いられる「子孫に借金を残すな」という表現は、一面的な見方というべきだろう。

子孫の代に政府の「負債」を残すことは、同時に民間金融「資産」(としての国債)を残すことでもあるからだ。

そもそも、日本の財政状況が、本当に悪化を続けているのか、検証が必要だろう。

データの切り口を変えると、メディア等で喧伝けんでんされる日本の財政状況とは、異なる理解が得られるからだ。

2001年以降の政府純債務伸び率を概観すると、米英で5倍を超える純債務残高の増大が見られるのに対し、日本のそれは2倍に満たない。

つまり、日本の財政は米英と比べても健全な状態だと見ることもできるのである。