「面白くなければスワイプ」ユーチューブ広告との違い

またTikTokでは広告もUXとして優れているように思える。

まず、広告と一般投稿の差があまりない。また、広告があまり面白くないと思えば、すぐにスワイプして飛ばすことができる。強制的に数秒間見なければならないわけではない。

ポイントは、ユーザーに自由な裁量が与えられている点だ。さらに、フルスクリーン&サウンドオン(音あり)という没入的な視聴環境の中で、70%近くが音を聴きながら広告接触しているという。だからこそ、広告体験としてもベターなのだ。

では、比較としてユーチューブではどうだろうか。

起動すると、まずはホーム画面が立ち上がる。フォローするアカウントの動画、スポンサードされた動画、あるいは視聴履歴に基づきレコメンドされた動画など、それらのサムネイル(中身が一目でわかる画像)がずらっと並ぶ。気になるものがあればクリック/タップしてもいいし、なければ急上昇タブや登録チャンネルタブに切り替えることもできる。

これを見ようと決めて視聴を始めると、広告掲載に適する人気動画の場合は広告が冒頭にはさまり、本編が開始される(それでもすぐに開始されるとは限らず、最近では自分の動画チャンネル用のイントロをインサートしていることも多い)。見終わると、次の動画やオススメ動画への切り替えがロードされ、次の動画に遷移する。

細かい差異ではあるものの、両者にはユーザーの負担の違いがあることがわかる。TikTokは起動してからのステップ数がとても少なく、また「選ぶ」ことの心理的な負荷をあまりかけていない。動画が面白くないと思ったら、すぐスワイプして次に移ればいい。

人間工学的なアプリ設計で、評価が反映されやすい

先ほどTikTokはスマホネイティブなUXになっていると説明したが、これは、コンテンツの評価システムの視点からも説明できる。つまり、つくる側面、見る側面だけでなく、それを評価する側面にも及んでいるということだ。

端的に言えば、TikTokでは「いいね!」を押しやすい仕組みになっている。

ふと意識してみると、スマホを右手で持った時に、「いいね!」を示すハートマークがちょうど親指と重なる位置にあることに気づくだろう。指をそれほど動かさなくても押せるというのは、ユーザーの負荷を下げる意味で非常に意義のあることだ。

ウェブサイトでも、ユーザーの滞在時間やページ遷移の確率はどこにどんなボタンを配置するかで大きく左右されることを考えれば、こうした人間工学的な設計の工夫がいかに重要かが納得できる。

付け加えるならば、TikTokでは「いいね!」がブックマーク的な目的で押されることが多い。TikTokでは一度のセッションで数多くのショートムービーを視聴することになり、ブックマーク機能にあたるものが実質的にないため、あとから見返せるように「いいね!」を押すことになる。より評価が反映されやすいとも言える。