ニュースを見るのは老年層、若い世代はSNSをチェックする

第一チャンネルのニュースを見ているのは主に老年層。若い世代はSNSで情報をチェックする。そして老年層(と言っても、1991年のソ連崩壊前後はまだ若く、「民主化」を叫んでいたはずなのだが)は保守的で、このニュースを見ていても若者の「いたずら」に怒っただけだろう。その後CNNのサンクト・ペテルブルク街頭からのルポを見ていたら、きちんとした身なりの老女が言っていた。「プーチンを支持しているかですって? もちろん。100%、いえ200%」。

河東哲夫『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)
河東哲夫『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)

本気ではないかもしれないが、こういう保守層もまた、ロシアには多い。ソ連が崩壊した前後にも、こういう体制派の老女はいたものだ。幹部として特権層用の特別マンションに住んでいる連中。特権を自分の権利だと勘違いして、死守しようとする者たちだ。許せない。

戦争が起きて以来、ロシアのいろいろな都市では週末、反戦デモが行われている。3月6日だけでも全国で4300名余が拘束されている。僕は革命前夜を想定した。でも、現地にいた人の話では、小規模で、何をやっているのかわからないデモだったということだ。3月末にはデモは下火になった。

当局のウソがばれ、生活が苦しくなると、ロシアの大衆は怖い

しかし、ロシアは平均寿命が短くて、老年世代が少ない。34歳以下の若年人口が全体の43%を占める「若い国」だ。若い世代が老年世代のウソをあばいて、戦争の犠牲になることを拒否する。こうなったら、当局も手を焼くことだろう。当局のウソがばれ、しかも生活が苦しくなってくると、ロシアの大衆は怖い。

こういう時西側が気をつけないといけないのは、西側、特にアメリカが前面にしゃしゃり出てくると、ロシア国民は一丸となってプーチンと、その戦争を支持するだろうということだ。ロシア人はアメリカが好きだが、アメリカ人たちに「何々をこうしろ」と言われるとむきになって反発する。制裁で物価が上がっているのも、アメリカのせいだと思っているだろう。加えてアメリカ兵がウクライナに現れたら怒りに火がつく。だから、バイデン大統領が「ウクライナに米軍を送ることはしない」と言っているのは、賢明なことなのだ。

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