大阪府立香里丘高校野球部(枚方市)が面白い試みをしている。球児あこがれの甲子園を目指しつつ、野球人口減少に歯止めをかけて部員を集めるため、近隣の小さな子供たちを自校グラウンドに招待し、野球に親しんでもらう企画を定期的に実施中だ。フリーライターの清水岳志さんが取材した――。
大阪府立香里丘高校野球部
撮影=清水岳志

マジで甲子園を目指す野球部が近隣の子供と遊ぶワケ

「ネット裏に近所の子供たちが見に来るねん。そしたら、席を空けてくれへんか」

3月下旬の日曜日、大阪府立香里丘高校野球部(枚方市)のグラウンドには小さな子供たちが集っていた。

それまでバックネット裏でスコアブックをつける準備をしていた部員たちに向けて、同校の岡田泰典監督(44歳)が声をかけた。

その後、小学生の男の子4人と引率した男性がやってきて、子供たちはパイプ椅子に座った。

4人の男の子
撮影=清水岳志

「お菓子食べたい。それと、ジュースも」

男の子の一人が男性(父親)にねだっていた。

この日、同校は同じ府立の牧野高校と練習試合をした。甲子園では春のセンバツ大会の真っ最中。出場できなかった両校は「夏の甲子園」大会の試金石となる春の公式戦に向けてトレーニングし、対外試合が解禁されて試合をすることになっていたのだ。

そのネット裏で子供たちがお菓子を食べながら観戦していた。

どういうことなのか。

高校野球を近隣の人に身近に感じてもらいたい……。実は、部員減にストップをかけたい公立校の方策のひとつだ。

この日の午前中、子供がネット裏の特等席で試合観戦できるのとは別に、「OSAKA BASEBALL PLAZA」と銘打ったイベントを行った。小学生までの子供たちを集めての野球体験会だ。「(他校のアイデアを引き継ぎ)今回が通算5回目の実施です」と岡田監督が説明する。

小学生が中心だが最年少は3歳の幼児もいて26人が集まったという。グラブ、ボール、バットなども準備したので、子供たちは手ぶらで来られる。