映画監督やプロデューサー、俳優による性加害・性暴力の告発が相次いでいる。そうした告発を受けて、公開中止となる作品も出てきている。作家の岩井志麻子さんは「監督らに問題があるからといって、作品をお蔵入りにするのは反対だ。これでは関係者すべてが救われない事態になってしまう」という――。
イタリア・ベネチアで開かれた第68回ベネチア国際映画祭に出席し、トロフィーを掲げる園子温監督=2011年09月10日
写真=dpa/時事通信フォト
イタリア・ベネチアで開かれた第68回ベネチア国際映画祭に出席し、トロフィーを掲げる園子温監督=2011年09月10日

一連の報道を受け、憤りとともに私が感じた“ある思い”

立て続けに告発され暴露され糾弾され、というのが続いてしまった。高名な監督や人気俳優による女優、そして女優志願者たちへの性的な暴行や強要、嫌がらせ。

甘言や脅しはセクハラとパワハラの複合。悪質すぎると世間は彼らへの非難一色となり、刑事罰こそないが、ほぼ今後の表舞台での活動は断たれてしまった。

一連の報道は、同じ女として憤りを覚え、彼女らの痛みを生々しく感じた。だが、その世界に端くれとはいえ関わっている者としては、それだけではない思いも抱いた。

私が見た園子温監督の実像

私の本業は小説家だが、結構な数の映像作品に出してもらっているし、テレビもレギュラーで出続けている。実は、告発された一人である園子温監督の作品『地獄でなぜ悪い』にも出演しているのだ。

嘘偽りなく、現場では楽しかった記憶しかない。本当に、園監督はおもしろくて優しくてという、いい思い出しかない。次にお声がかかるのはいつかと、待ち望んでもいた。

うまくセリフが言えない自分に腹が立った、変な訛りがあるのを指摘されて恥ずかしかった、という場面もあったが、それらも私の中では笑いとともに思い出せるものとなっている。監督は的確な指導をしてくれ、感情的に怒鳴られるなんてまったくなかった。