政治家以上の影響力を持つ「国税OB税理士」

税務調査に関しては、政治家よりも国税OBの方がよほど影響力があり、介入の頻度も多いです。政治家は、支持者から口利きを求められたときにだけ介入してきますので、税務署としてもそう簡単には口利きには応じません。

しかし国税OBの場合、税務署と日常的な癒着の構造があるのです。具体的にいえば、国税OBの税理士が顧問となっている企業には、税務署は手心を加えることが多いということです。

税理士というのは、企業の決算書、申告書をつくるのが主な業務です。税務署に対し、企業側の代理人的存在であり、国税(税務署)との折衝役的な存在でもあります。

この税理士の多くは、国税のOBなのです。国税職員というのは、約23年間勤務すれば、税理士の資格が得られます。そのため、国税職員は、退職すると、ほとんどが税理士になります。つまり、それまで企業の税務調査などにあたっていた税務署員たちが、退職後は企業側に回って、代理人になるのです。

現役の税務職員にとって、国税OB税理士は先輩にあたります。それが、納税者の味方、つまり自分たちの敵として対峙たいじするわけです。普通の「緊張関係」を保てるわけがないのです。

そもそも国税職員というのは、先輩と後輩の結び付きが強い組織です。後輩は先輩の言うことを絶対聞かなくてはならないし、先輩は後輩の面倒を必ず見なければならないという不文律があります。

大阪国税局の職員十数人がOBから接待

また国税職員というのは酒の付き合いが非常に多いです。そして酒席となれば、必ず先輩が後輩に奢ってやらなければならないという暗黙の掟もあります。そういう関係というのは、先輩が国税を辞めたからといって簡単に断ち切れるものではありません。

すると、どうなるでしょうか? 当然のごとく税務署員と税理士の癒着になるのです。たとえば、2008年11月に、こういう事件が発覚しています。

大阪国税局の職員十数人が、同国税局出身のOB税理士から飲食の接待を受けていて、処分を受けたのです。このOB税理士は2002年まで大阪国税局に勤務しており、当時は大阪市内で税理士業を開業していました。

そして個人の課税関係の現職職員らに飲食の接待などをしていたそうです。

この大阪の事件は少し古いですが、現役の国税職員に聞いてみると、今も国税の体質は変わっていないようです。この件での大阪国税局監察官の調査などでは、職員が税理士に対して具体的な便宜を図った事実は確認されなかったので、贈収賄事件には発展していません。