「悩み」という言葉を聞くと、それをネガティブなものだと捉える方が多いかと思います。しかし私は、ネガティブでもポジティブでもなく、ニュートラルな「データの集まり」だと捉えています。

そして、多くの方は、本来はニュートラルなデータの集まりである悩みから「自分は何者なのか」を知るための情報をうまく引き出せないために、悩みをネガティブに捉えてしまっているのだと考えています。

「答えは悩みの中にこそある」

ここまでお話ししてきたように「答えは悩みの中にこそある」のです。

悩んだ時は「等身大の自分と正直に向き合う機会が訪れた」と考えましょう。普段向き合えていない、一番近くて一番遠い存在である自分。そんな自分を理解するきっかけを悩みは与えてくれます。

神保拓也『部下・同僚・チーム、あなたの心に火を灯す新常識 悩みは欲しがれ』(KADOKAWA)
神保拓也『部下・同僚・チーム、あなたの心に火を灯す新常識 悩みは欲しがれ』(KADOKAWA)

冒頭に挙げた、自分を盛ることで悩みをこじらせてしまったAさんの事例で言えば、「いつから職場の人間関係に悩み始めたのか?」「きっかけは何だったのか?」「昔から人間関係には苦労してきたのか?」「人間関係がうまくいっていない理由を自分ではどう考えているのか?」「職場の他の人の目にあなたはどう映っていると思っているのか?」といった質問を通じて、悩みの正体に迫っていく必要があります。

このように悩みに向き合っていくことで、ようやく「自分はどういう人間で、何に喜怒哀楽を感じ、どんな強みと弱みを持ち、何を大切にして生きていきたいと思っているのか」が少しずつわかってくるのだと思います。

しかしながら、悩みの中に詰まっている、自分を深く理解するためのヒントには見向きもせず、手っ取り早く悩みを消し去るための解決策を自分の外側へ求めてしまう人が多いのが現状です。

悩みをすぐに解決しようとする行為は、「自分はどんな人間なのか?」「なぜこんなにも自分はこの問題について悩むのか?」といった、本質的な問いについて考えるチャンスを放棄することに他なりません。

勇気を出して自分の悩みを掘り下げてみよう

悩みをじっくり掘り下げていくと、不安や不満の出どころや、なんとなく感じている居心地の悪さや違和感の原因が、少しずつわかってきます。

自身の性格はもちろん、仕事、人間関係、家庭環境、失敗や成功体験の他に、これまでに読んだ本や著名人の影響など、すべての物事が絡み合って悩みが生まれていることが明らかになってくるのです。

それらを一つひとつ解きほぐし、悩みの正体を明らかにして、悩みの原因となっている芯に辿たどり着くまで、根気強く深掘りしていかなければいけません。

【関連記事】
「相手を変えたければ、まず自分を変えよう」そんなよくある助言を、禅僧が真正面から否定するワケ
養老孟司「東大医学部に入るのは超高血圧になるのと同じで、褒められることではない」
なぜ子どもの自殺が「過去最悪」となっているのか…「遊びの喪失」がもたらす深刻な影響
なぜ北欧は日本と違って「弱者にやさしい社会」なのか…日本人が誤解している「決定的な違い」
会社が絶対手放さない、優秀人材6タイプ