「人生100年時代」は親も子供も金銭的自立が必要

60代後半や70代になると亡くなる人も増えてきますので、必ず親のほうが先にくとは限りません。遺言を書くのも複雑になりますよね。現在は大概、親が先に亡くなることを前提として書かれているでしょうが、今後は年老いた子供も親も同時に遺言を準備する時代となります。

それはすなわち、親ののこした財産を自分の老後資金として当て込めなくなるということでもあります。相続できたとしても70歳前後となってからになります。「人生100年時代」とは、90代まで生きる親も高齢者となった子供も、それぞれが金銭的に自立できるよう準備をしておかなければ回らなくなる社会ということです。

90代まで生きる人が増えてくるにつれて、老後資金が足りなくなり、資産を切り売りせざるを得なくなる人(親)も増えることでしょう。いざ遺産相続となった際、残っていた財産が意外と少なかったということになりかねません。

2030年代後半になれば3軒に1軒は空き家になると推計されているのですから、実家の土地・建物にはほとんど資産価値がなくなっていたということも、日常の風景になるかもしれませんね。

上空から見た東京の街
写真=iStock.com/Delpixart
※写真はイメージです

極小ワンルームが単身高齢者の住み家になる

【牧野】大量相続時代には思わぬ副産物もあります。高齢者の住環境の好転です。家という基本的な居住空間が確保しやすくなるのです。現在は高齢者、特に収入のない1人暮らしの高齢者が家を簡単に借りられない状況にあります。家主が家賃の滞納や孤独死を恐れて、貸さないからです。

河合雅司、牧野知弘『2030年の東京』(祥伝社新書)
河合雅司、牧野知弘『2030年の東京』(祥伝社新書)

しかし、大量相続により家が余るようになると、家主と借主の立場が逆転します。家賃も下がるでしょうから支出が減り、可処分所得が増えることになります。不動産市場では現在、ワンルームマンションが余り気味です。これまでの主たる客層だった若年層が減り、ワンルームマンション投資時代に大量に造られた物件もあります。ワンルームマンションの家賃は安いですし、狭いために動き回らなくていい。高齢者向きなのです。

最近、デベロッパーが若年層向けに開発した賃貸マンションで、空室率が急上昇しています。特に都心へのアクセスが良い割に地価が比較的安い城東地区では、空室がまったく埋まらないことが報告されています。さらに、相続した一戸建て住宅を賃貸に回す動きも今後加速するでしょう。このようななかで、大量相続時代を迎えることになるわけですから、いっそうの値崩れが予想されます。

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