春になると「仕事中に眠くなる」「よく眠れない」という悩みを抱える人がいる。対策はあるのか。産業医の池井佑丞さんは「季節の変わり目による環境変化に、身体が追いついていない場合が多い。自律神経を整えることが改善につながる」という――。
卵かけごはん
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春は眠りにまつわる問題を抱える人が多い

4月も半ばとなり季節はすっかり春になりましたね。とはいえ、まだ肌寒い日があったり、昼夜の寒暖差が大きな日があったりと、季節の変わり目特有の過ごしにくさを感じている方も多いかと思います。

「春眠暁を覚えず」という言葉がありますが、春は眠りにまつわる問題を抱える方が増える季節です。読者の中にも、朝起きられない、日中眠くなるなど実感されている方がいらっしゃるかもしれません。夜寝つけないという声も聞かれ、倦怠けんたい感・集中力の低下や気分の落ち込み・イライラするなどの不調がある場合には、十分な睡眠がとれていないことに起因している可能性もあります。

春先に睡眠の問題が生じる原因としては、急激な環境変化に身体が追いつけていない場合も多いです。今回は睡眠を中心に春先に注意したい不調の原因と対策についてお話ししたいと思います。

春先の睡眠不足の原因の一つは「日の出が早くなること」

はじめに、人の睡眠時間の長さが季節によって変化することはご存じでしょうか。一般的に睡眠時間は、冬は長く、夏は短くなる傾向があります。季節ごとの平均睡眠時間を調査した結果、夏と冬とでは30分の差があったそうです。また、太陽が出ている時間の長さに反比例して睡眠時間は短くなるそうで、睡眠時間と日照時間とには相関があることが示唆されています。(白川修一郎ほか「日本人の季節による気分および行動の変化」『精神保健研究』39; 81-93 1993年)

さらに、日照時間は睡眠と関係の深いホルモン(メラトニン・セロトニン)の分泌にも関連します。このメラトニンとセロトニンの関係について簡単にご説明します。メラトニンは眠気を引き起こすホルモンで、夜間に分泌量が増えます。セロトニンは日中の太陽光を浴びることで生成され、外界が暗くなるとこのセロトニンを原料にメラトニンの合成が行われます。

こうして作られるメラトニンですが、強い光や明るい光を受けることで分泌が低下することがわかっています。春先に睡眠不足になりやすい要因のひとつとして、日の出が早くなることに付随してメラトニンの分泌量が減少することが考えられます。