【柴山】私も、それだけの覚悟が持てる事業を最初に探さないといけないと思います。大学を卒業して就職する時点では、自分が何に情熱を感じるかは、まだわかっていない人がほとんどです。起業を志す人は、人生を懸けられる事業、それだけパッションが持てる事業を最初に探すべきだと思いますね。アメリカでは、起業のタイミングとして層が厚いのは40代ですね。情熱、専門知識、業界でのネットワークを身につけているから、20代よりも成功確率が高いようです。

その点、マッキンゼーは3カ月おきぐらいに新しいプロジェクトが経験できました。製薬会社をコンサルティングしたあと、金融業界を担当することもあるし、海外のプロジェクトもある。セレンディピティというか、パッションを感じるものに巡り合える可能性が高いのはメリットだと思いますね。

21世紀の経営者にプログラミング思考は必須

【大前】プログラミングスクールに通って、自分でウェルスナビのプロトタイプを制作したのはいつのこと?

【柴山】資産運用を広めるにはテクノロジーが必要でしたが、私にはプログラミングの知識がありませんでした。ネット系企業の人に相談してまわったら、ある会社のCTOに「スーツ姿の、いかにも財務省、マッキンゼーでございます、という格好じゃエンジニアは一緒に働きたがらない。スーツはジーンズの敵ですよ」と言われました。

そこで、まずはジーンズをはいてみましたが、当然、何も起こりません(笑)。エンジニアと一緒にものづくり、サービスづくりの楽しさや苦労を実感しないと働く仲間になれないという意味だとわかって、渋谷のプログラミング学校に通いました。

先生は大学生か大学院生、生徒も20歳前後という教室に、30代半ばで起業をめざす私が1人交ざって、プログラムを一から教わりました。ウェルスナビのプロトタイプができたら、状況が変化しました。それまでは「こういう未来をつくりたい」と言っても仲間は集まらなかったのが、実際に動くプロトタイプを見せると「おもしろいですね。一緒につくりたい」と言ってもらえて、最初のチームができあがりました。プログラミング思考を身につけて、ビジネスサイドとエンジニアサイドの両方の視点を持てたのはよかったと思います。

【大前】元マッキンゼーで日本交通会長の川鍋一朗さんも、同じプログラミング学校に通ったらしいね。21世紀の経営者にプログラミング思考は必須。どういうシステムをつくりたいのかを自分で描けないと始まらない。