実は2度目の生産終了

実はSRが生産終了となったのは、今回が初めてではない。

2008年にも、2009年より適用される自動車排出ガス規制の強化に対応できなかったことから、一度その歴史が途絶えている。SRは登場が1978年だから基本設計が古く、燃料供給装置はキャブレターだった。それでは新規制をクリアできなかったのだ。

しかしファンからの根強い復活の声を受け、ヤマハはSRの燃料供給装置をフューエルインジェクション(FI)にして規制対応させ、2009年12月に再登場させた。以降、昨年まで生産が続いてきたのである。

その前例を踏まえれば、また近いうちに規制対応版のSRがリリースされそうなものだが……。

「2009年にFI化するモデルチェンジを行った際、それに伴う補機類を収めるスペースの捻出に苦労したと聞いています。実際、シート下のバッテリーはやや斜めに角度をつけて配置されていますし、サイドカバーもそれまでのモデルよりもわずかに膨らんでいるなど、何とかかんとか補機類を収めた……という印象です。そこへさらにABS化しようとすると、増加する電子機器類を収める場所がもうないのかもしれません」

もちろん外観を大幅に変更すればABS化も可能だろうが、SRには〈デザインは極力変えてほしくない〉と望むユーザーが多く、スタイリングに手を加える選択肢は取りにくいという事情がある。

「ただ、やりようはいくらでもあると思います。バッテリーにしても近年は高性能かつ小型なリチウムイオンバッテリーがありますし、フレーム形状を変えたって、設計者の工夫次第で美しいラインを保つことはできるはずです」

ヤマハのSR400
写真=ヤマハ発動機
SRが2009年に再登場した際は増加した補機類を収めるため、サイドカバーが初代モデルよりわずかに膨らんだ

規制クリアは可能だが、価格転嫁は避けられない

一方、排ガス規制をクリアするのは技術的にそう難しい話ではないという。

「ただFIセッティングの変更や、触媒の追加などマフラーの変更、場合によっては排ガスをクリーン化するために、エンジン内部パーツの変更も必要となるかもしれません。となると、必然的にコストが増加します。バッテリーやフレーム形状を変えた場合もしかり」

「そうしたコストを車両価格に転嫁した場合、これまで通りのセールスが見込めるのか。もし従来と同等に売れたとしても、かけたコストを完全に回収できるのかという検討を重ねた結果、生産終了という苦渋の決断に至ったのでしょう」