ヤマハのドル箱にして、ブランドの象徴的存在

業界紙『二輪車新聞』が2021年のバイク新車販売台数(推定値)を発表し、小型二輪クラスでヤマハ『SR400』(以下、SR)が首位となった。

ヤマハのSR400
写真=ヤマハ発動機
2021年、小型二輪クラスで最も売れたヤマハ「SR400」

小型二輪とは、道路運送車両法でいう総排気量251cc以上の車両を指す。おおよその人が「バイク」と聞いてイメージするのはこのカテゴリーのモデルだから、“2021年で最も売れたバイク”がSRだったわけだ。さらにSRは昨年だけでなく、2020年も2位にランクインしている。

SRは初代モデルが1978年にデビュー。いかにもバイク然としたシンプルな美しさと、単気筒エンジンならではの味わいが幅広いライダーに支持され、ロングセラーを続けてきた。ヤマハのドル箱にして、ブランドの象徴的存在であることに異論を挟む者はいない。

だがこのSRは、昨年3月15日に発売された『ファイナルエディション』をもって、日本国内向けの生産を終了してしまったのである。最終生産分はすぐに完売となり、新車でSRを手に入れることはこの先もうできない。なぜなのか?

販売も絶好調な歴史ある主力商品を、ヤマハが廃番にしてしまった理由は何なのか。

人気バイク専門誌『ヤングマシン』の松田大樹編集長が語る。

「SRの生産終了が昨年1月に発表された際、ヤマハはその理由を『今後の様々な規制に対応していないため』と説明しています。これはどういうことかというと、まず小型二輪への前後ABS(=アンチロック・ブレーキ・システム。急ブレーキをかけた時などにタイヤがロックするのを防ぐことにより、車両の進行方向の安定性を保つ装置)装着が義務化され、非ABS車は2021年10月までしか生産できなくなってしまいました」(松田氏、以下同)

「さらに2022年10月以降に生産される車両には、平成32年(令和2年)国内排ガス規制のクリアも求められます。主にこの2点が、ヤマハの言う“様々な規制”です」