世界第3位の経済大国がサイバー能力では9位

そんなデジタル化の遅れは、世界的な経済活動においても遅れをとることを意味する。日本は現在たしかに世界第3位の経済大国ではあるが、デジタル化の遅れが続き、その「経済大国」の立場すら怪しくなりつつある。

欧米のシンクタンクによれば、「2030年ごろには日本は世界第3位の経済大国という地位をインドに明け渡すことになる」との予測も出ているが、「デジタル敗戦国」から復興へとうまく移行できていないことから、経済分野でも後退をすることになりそうだ。

サイバー世界でも、日本はまったく強国に入れていない。2020年9月、科学・国際情勢を研究するハーバード大学ベルファー・センターが、サイバー防衛や攻撃力など7つの項目で30カ国のサイバー能力を測定する「国際サイバー能力指数2020」を発表した。そこで、日本は9位に甘んじている。

敵対国を攻撃できる能力があるのかすら怪しい

その7項目は以下だ。

1.国内のサーベイランス(調査監視)・モニタリング
2.国家のサイバー防衛の増強
3.情報環境のコントロールや操作
4.国家安全保障のための海外のインテリジェンス収集
5.商業的な利益や国内産業の育成
6.敵対国のインフラ等の破壊や無力化
7.国際的なサイバー規範や技術基準などの定義づけ

一見すると、これらの指標のどれをとっても、日本はまったく世界のサイバー強国に歯が立たない。

しかし、恐らく3、5、7については、経済産業省や総務省の管轄下において、それなりに対応が進んでおり、他国に伍していけるかもしれない。だが、サイバー強国と呼ばれる米中英に比べて、4の「国家安全保障のための海外のインテリジェンス収集」や、6の「敵対国のインフラ等の破壊や無力化」などは、世界的なサイバー能力を測る指標とされているのに、日本はほぼ何もできていないと言っていい。

その理由としては、オフェンシブ(攻撃的)なサイバー対策が圧倒的に欠けている現実がある。そもそもオフェンシブ能力があるのかすら怪しい。

【図表1】研究機関によるサイバー能力の国際比較
研究機関によるサイバー能力の国際比較(出所=中谷昇『超入門 デジタルセキュリティ』)