では、変化に対応するための能力とはどんなことを意味するのか。具体的にいうと、「論理的思考力」「変化志向」「コミュニケーション意欲」という3つの要素が不可欠だといえる(図)。

「論理的思考力」とは、一つの出来事について自分の視点で考え、正しく認識できる力のことだ。この能力は、いままでの物語――いわゆるビジネスモデルや市場環境がどう変化していくかをきちんと理解して、適切な形で次の一手を打てるかどうかにつながっていく。

論理的思考力の基礎は、文章を読解して、的確に表現できる「国語力」と、全体の構図をつくる「数学力」である。基礎学力によるところも大きいが、ある程度、年をとってからでも努力で鍛えることもできる。まず一つの事象について200字で説明する文章を書き、次にそれを図化してみよう。どちらも正確に本質を捉えることを意識しながら行うことが大事だが、多くの人がうまくできないものだ。しかし、このトレーニングを何度も繰り返すことで、論理的思考力は急速に伸びていく。人材を採用するときにも、こういった課題を出してみることで、論理的思考力が高いかどうか見極めることができるだろう。

「変化志向」は、安定より変化を求める志向性のことで、往々にしてスピードの速い変化を好むタイプと重なる。ルールが突然変わっても勝てると考える「自己信頼感」と、先がわからないほうが大変だが楽しそうと考える「楽観性」に基づいて形成される。こちらは20代でほぼ固まり、その後変化することは多くない。

ハイリスク・ハイリターンを好むかローリスク・ローリターンを好むかは、この変化志向の強弱によって決まってくるが、ローリスク・ローリターン志向、つまり変化志向の弱い人材ばかりが集まった会社は、時代の変化に対応できず、早晩潰れてしまう可能性が高い。