パパ活の背景には親世代の経済的困窮がある

――パパ活に、ブランドのバッグや洋服を身につけ、ぜいたくな生活をしたいがために、父親世代の男性と食事や性行為をしているというイメージを抱く人もいると思うのですが。

私が取材した女性に限っていえば、そんな余裕はなかったですね。

志駕晃『彼女のスマホがつながらない』(小学館)
志駕晃『彼女のスマホがつながらない』(小学館)

彼女たちがパパ活をはじめる動機は切実でした。私がインタビューをさせてもらったのは、主に20代前半から30代前半の女子学生やOL。彼女たちがパパ活を続ける最大の理由は、生活費と学費の支払い、あるいは奨学金の返済です。

昔は、親が授業料や生活費の一部を支払ってくれて、子どもたちは足りない分をバイトでまかなえばよかった。ただ、この30年でかつての当たり前だった役割を親が果たせなくなってしまった。

景気は一向に回復せず、格差が広がった。親世代も困窮している。収入が上がらず、子どもたちへの仕送りもままならない。

そのしわ寄せで、若者たちは学費と生活費を自ら稼ぎ、奨学金に頼らなければ、大学に通えない。仮に月8万円の奨学金を借りたら、年間約100万円。大学卒業までに、借金が400万円にまで膨れ上がる。普通のアルバイトだけで、とても賄える金額ではありません。その結果、水商売や風俗の仕事をはじめる女子学生は珍しい存在ではなくなった。

しかしキャバクラなどの水商売をはじめると、連日深夜まで働かなければならない。欠勤などには高額な罰金が科せられるから、学業よりもバイトを優先せざるをえなくなる。学生生活と水商売は両立しにくいのです。風俗は時間の都合はつきやすいのですが、会ったばかりの見知らぬ男の前で裸になるのは嫌だ。そんな状況で、時間の融通が利き、短時間に高収入をえられるパパ活が新たな選択肢として登場した。

パパ活で「自分の商品価値」を残酷に突きつけられる

――やむにやまれぬ事情で、パパ活をはじめているのですね。

私が話を聞いた女性たちは、本当にマジメで前向きな子ばかりでした。そして生活には、本当に困っている。だからこそ、パパたちは「オレが支えなければ」とお金を出すようになる。

パパも、お金を持っているだけでなく、年齢の割にオシャレで、おいしいレストランを知っていて、遊び方も分かっている。同世代の貧乏な大学生と付き合うよりもずっといいと感じるのでしょう。

ただしパパ活を続けるうち、手段が目的化してしまう女性も少なくないようです。ある女性は「いつやめられるか分からないから怖い」と漏らしていました。

パパ活に足を踏み入れたばかりの女性には、デメリットは見えていません。

毎月、おいしい料理をごちそうしてもらえて、オシャレなパパと性行為をしてお金をもらえるのなら、自尊心を保てるのかもしれない。けれど、そんな女性は一握り。現実は太パパを巡る女の争いです。

あの子は高級レストランで食事だけして毎月10万円ももらえているのに、なんで私にはいいパパがいないのか……。なんで私はイヤな男と寝て2万円しかもらえないのか……。

パパ活で優雅に暮らしているように見える女性に対する嫉妬もあるのでしょう。もっと美しくならなければ、と追い詰められ、せっかく稼いだお金をブランド品と美容整形につぎ込んでしまう女性もいます。

パパ活の商品は、自分自身です。毎回、自分の商品価値を残酷に突きつけられる。それでも、生活や将来のために、パパ活を続けざるをえない女性もいるのです。(後編に続く)

(聞き手・構成=山川徹)
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