読み書き算盤を徹底的に教える

ただこうしたクリエーティブな人間は、会社の組織の中ではなかなか育てられません。プランニング、スキーミングというのは教育可能な分野ですが、人心掌握やクリエーティブ、イマジネーティブなものの考え方は人為的に養成することは難しい。マニュアル通りに行動すればいいようなことは誰にでも教えられますが、いざという事態に直面したときに自由自在な発想ができるというのは、天性のものであるだろうし、幼児期からまだ比較的人格が形成される前、すなわち大学を卒業するまでの間くらいの人生体験から生まれてくるものではないでしょうか。

どういう人間がクリエーティブになるかは神のみぞ知る世界ですが、何らかの方法で育てることができるとすれば、人類の歴史の中でプラトンや孔子の時代からやってきたやり方しかないんだろうと思います。それは幼いときに読み書き算盤、すなわちリーディング、ライティング、アリスメトリックの3つの基礎を徹底的に教えることです。ただ、習う基礎は大体が面白くないものですが、それとは関係なく、まずは効率よく教えることです。基礎の力さえついていると、例えば読書であれば自分の面白いと思うものが読めるわけですから、読書を通じて他人の経験から学ぶこともできる。他人のイマジネーションを通じて自分を大きく膨らませることもできるのです。

いずれにしてもリーダーは達成すべき目標を定めて、それに向かって動く人間でなければなりません。動いているときというのは人の気持ちは1つにまとまる。だから、常に受動ではなく、能動であれということです。そして状況は自らがつくりだすものであって、状況に振り回されてはいけない。自分がルールメーカーであって、人のつくったルールで最適化を図るというのは使われる人間の発想です。地図にないルートを行くことこそ、上に立つ者の務めです。今まではこうだったから、これからもこうなるはずだと予定調和の発想で歩くのは誰にでもできます。

リーダーたる者は新しい方向性、そしてネクストを決めなければなりません。組織を活性化するというのは、常に新しい目標を追い続けることであり、リーダーはそれに向かって人の気持ちを収斂させることだと思います。

※すべて雑誌掲載当時

(吉田茂人=構成 小倉和徳=撮影)