圧倒的な熱意と周囲からの協力

負けず嫌いという言葉ではひとくくりにできない気持ちの濃淡が、藤井三冠の心の内側にはある。

「多くの人は負けてもあっさり諦めるものです。なにか理由を見つけ出し『しょうがない』とか『勝負は時の運』などと自分を納得させようとします。しかし、聡太は違いました。心にマグマのような荒々しさが、冷静さと同居している。負けず嫌いのランキングがあれば、間違いなく名人クラスです」

藤井三冠のようになるには、二つの条件が要ると文本さんは言う。

「とにかく圧倒的熱量。将棋に限らず、勉強でも芸術でも、その分野をどのくらい好きか、という熱意が必要です。努力を努力と思わないほど熱中できるかどうか。これがあることを前提に、二つ目は親の全面的協力。ブレーキをかけずに好きなことをとことんやらせることですね」

将棋を指す親子
写真=iStock.com/yamasan
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藤井三冠が小学校に上がるころ、週3回だった教室を4回にしてくれと申し出た。室長は即座に首肯し、母親は送迎の予定を調整した。同世代のライバルも当然のように同調したという。

「聡太の熱量に協力することで、周囲も幸福になったと思います。“すごいやつに、自分も協力したい”ってね。どの道であっても、そうならないと、一流になんてなれないんじゃないかな」

藤井三冠の現在の活躍ぶりを見て、文本さんは次のように語る。

「彼はたとえ対局で勝っても、自らの課題に言及します。プロ棋士全般に言えるのでしょうが、勝って良かったと満足するのではなく、次の対局に向けて自分が指した手の改善点に目を向けています。将棋には対戦相手がいますが、そのなかでも常に一手一手、自分の判断が正しかったか、検証しながら考える。その力が、彼には早くから、高いレベルで備わっていました。また、教室で4歳上に自分が目標とするライバルを見つけられたのも、彼の成長にとって大きかったのだと今になって思いますね」

(文=須藤靖貴、本誌編集部)
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