「人間関係」「居心地」を考えて柔軟に決めれば良い

私の考えはこうです。引越費用は、20平米程度のスペースに入るだけの荷物しかないため、特別な経費が掛かることはありません。老人ホーム入居者は、実は、今はやりのミニマリストなのです。したがって、経済的な話は考える必要はないと思っています。

小嶋勝利『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社)
小嶋勝利『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社)

さらには、何が何でも「転ホーム」ということではなく、状況を見極めるということが重要になってきます。たとえば、当該ホーム側と良好な人間関係が構築できている場合は、無理な「転ホーム」をする必要はありません。最後まで、当該ホームに託す、ということも重要です。たとえ介護看護能力が足りなくても、老人ホームは医療機関ではないため、知識や技術のほかに「居心地」というものが重要になってくるからです。

考えてもみてください。医療の場合、仏頂面で感じが悪いがスキルの高い医師と、いつもニコニコ感じは良いが、スキルが低い医師とでは、どちらに治療をしてもらいたいでしょうか? この場合は前者ですね。介護ではどうですか? 介護スキルは高いが感じの悪い介護職員と、介護スキルはおぼつかないが、いつもニコニコして感じが良い介護職員とでは、どちらに介護支援をしてほしいでしょうか? おそらく後者でしょう。

したがって、入居している老人ホーム側と良好な人間関係が構築できているという場合は、入居者の身体の状態を考えながら、「転ホーム」を見合わせるという判断もあり、ということなのです。

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