この出来事は単なるビジネス上の事件ではなく、国際問題という性格を持っていたと、ゴーンは指摘する。「私が逮捕されたとき……ルノーはCEOだった私を守ろうとせず、すぐに厄介払いした。フランスの大統領と財務大臣は、1つのビジネス上の取引よりも日本とフランスの関係のほうが重要だと言った」

日本の外国人差別

自分の失脚の背景には人種差別とナショナリズムもあったと、ゴーンは言う。「私は日本で人気のある人物の1人ではあったが、外国人だというだけの理由で一部の日本人に嫌われていることにも気付いていた。日本有数の大企業で実権を持っているために、なおさら嫌われていたのだと思う……それでも構わないと、私は思っていた」

「けれども、タカタやオリンパス、東芝など、日本の企業でスキャンダルが持ち上がっても、日本人経営幹部は1人も刑事責任を問われなかった。私は思った。『責任を問われるべき日本人が1人もいないなんてあり得ない』」

ゴーンの逮捕と起訴は世界中で大きなニュースになり、19年末の逃亡劇はそれに輪を掛けて大きな話題を呼んだ。しかし、ゴーン自身は、「日本で大企業を立て直した唯一の外国人、そして、3つの大陸で2社、のちに3社の経営者として成功した唯一の人物として記憶されたい」と語る。

そして言う。「私は、この地球上で日本から逃げ出すことに成功した数少ない人物の1人だ」と。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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