日本の温室効果ガス削減目標を達成するには再生エネルギーの拡大が不可欠となる。しかし太陽光と洋上風力の国内活用には課題が多い。NewsPicksニューヨーク支局長の森川潤さんは「政府とエネルギー業界が期待する数少ない独自技術として『アンモニア』がある」という――。

※本稿は、森川潤『グリーン・ジャイアント』(文春新書)の一部を再編集したものです。

日本政府が掲げた脱炭素目標は実現可能か

日本では2050年までのカーボンニュートラル、そして2030年までの排出量46%削減(2013年比)と、ここにきて脱炭素へと一気に舵を切ることがきまった。関係者の大半が「厳しい」と口をそろえるなかで、一体何をすれば実現できるのか。

まず、2030年の再エネは、電源構成のうち36~38%という方向で議論が進む。現状は2019年度の時点で、水力を入れて18.1%なので、約10年で2倍以上を目指すことになる。エネルギー業界からは、「ただでさえ再エネの適地が少ないのに」と不満の声も大きいが、確かに広大な用地はほぼ残されていないため、ここからは地道な積み重ねが必要となる。

2019年度の日本の電源構成
2019年度の日本の電源構成

「2030年はゴールではなく、2050年のカーボンニュートラルに向けた大きなマイルストーンの一つ目なので、そこに向けた施策をきちんと行っていくことが大事です。この1、2年が勝負だと思います」と、再エネ会社レノバの木南陽介社長は指摘する。

太陽光発電のカギは規制緩和と送電網改革

カギを握るのが、規制緩和だ。まず、太陽光でいえば、従来の2030年目標では64ギガワット程度(全体の7%程度)を目指していたが、46%削減という新たな目標下では、これを100ギガ以上まで一気に増やしていくことになる。これを実現するための一つの道が、これまで活用できなかった「荒廃農地(現在耕作が行われていない農地)」を太陽光発電に用いるための規制緩和であり、これが実現すれば、「数十ギガのポテンシャルはある」と木南は話す。

もう一つ、送電網の改革のカギを握る「ノンファーム接続」と言われるものがある。電気はいくら発電をしても、送電網の空き容量が十分でないと、需要地まで届けることができない。だが実は、これまではこの送電網のキャパシティが「先着優先」のルールになっていたため、先に建設された原発や火力発電が稼動していない場合でも枠を押さえていた。つまり、再エネは、その原発や火力が押さえた後に残った小さい枠を取り合っていたということだ。

それが、2019年から東電が試験的な取り組みを実施したことで、「混雑時は出力を抑制する」という条件で、送電網のキャパシティが再エネなどにも開放され、2021年1月からはこれが全国に適用されることになった。このように、送電設備の空いている容量を別の電源につなぐことをノンファーム接続と呼ぶ。

20世紀を通じて、電力は原発などの大規模電源から、大容量の送電網を通じて、巨大消費地へと電気を送り込む「集中型」で発展してきた。これを再エネなどを中心とした「分散型」に変えていくには、電気の血流を担う送電網の改革は一つの肝になる。