2010年代半ばまでに段階的に消費税率は10%まで引き上げることが国際公約となった。(Getty Images=写真)

政府資産の中には、今すぐにでも国民のために使える資金がある。いわゆる「霞が関の埋蔵金」だ。これは一般会計とは別に各省庁が特別な事業、スペシャル・プロジェクトを行うために設けられた特別会計のことである。主に役所が管理し、額が大きいだけでなく、一般会計のように国会で議論されることも少ない。特別会計の規模は、11年度予算で約220兆円。一般会計が約92兆円だから、その2.4倍もの規模である。しかし、額の大きさよりも、問題は資金が余っている特別会計の存在だ。余った資金が無駄遣いされているケースがあるのだ。

では、霞が関に埋蔵金はどれぐらい眠っているのか。これは埋蔵金の定義によっても変わってくるが、一般的な定義の特別会計の資産、負債差額に絞っても数兆円はすぐに見つけ出せるはずだ。実は10年も、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構から1.5兆円が見つかっている。このほかにも特別会計の余剰金はまだまだある。例えば、厚労省所管の労働保険特別会計には、数理に基づいた保険料が設定されていないために、「私のしごと館」など無駄遣いをしてもなお「埋蔵金」が5兆円程度あるのだ。

多くの国民は、政府は厳密におカネを管理していると思っているだろうが、実態は逆である。ひと言でいえば、どんぶり勘定だ。民間会社では経費は精査され、赤字の事業は見直す。でなければ、たちまち経営難に陥り、倒産してしまう。ところが国の場合、倒産はないので、おカネの管理はひどく杜撰だ。私が財務省時代につくるまでは、確かな国のバランスシートさえなかったのである。

足りなくなれば国民に負担を願えばいい、というのが役人の金銭感覚だ。特に財務省はやるべきこともやらずに、ただただ「増税命」の役所である。政府・財務省は、復興増税や消費税増税の前にやるべきことがあるのではないか。

(吉田茂人=構成 尾崎三朗=撮影 Getty Images=写真)