「自律型人材」が活躍する組織デザインとは

また、日本発のグーグルが現れるかどうかはともかく、わが国でも今後は、自律型、創造型の人材が企業の根幹となることが主張されている。自律とはいえないかもしれないが、少なくとも、以前と比べて、労働のなかで、自分の価値観を大切にしようとする人材は増えてきた。

そうした状況のなかで、自律型人材が活躍していけるための、新たな組織デザインが求められる。そのとき、これまでのような階層的な組織のあり方だけではなく、一人ひとりへのエンパワーメントに基づいた組織設計が必要になるかもしれない。

そうなると、組織としてのまとまりや一体感という意味だけでも、組織開発を積極的に行う必要性は高まってくるし、さらに自律型の人材が活躍するための場も必要だ。個別最適と全体最適の同時追求は、組織開発への投資をして初めて確保できる体制なのである。そうでないと多くの企業が、組織とは呼べない、個別最適を求める人の集まりになってしまう。

さらに私は、今必要な組織開発とは、単に組織としてのまとまりや一体感といった、組織としての最低限の条件を超えたところを目指すべきだと考えている。上記に述べた、個別最適と全体最適の同時追求などを含め、企業には、競争力の源泉となる多様な組織としての能力や強みが必要だ。そしてこうした能力を確保した企業が、より高い競争力を持つ。

つまり、企業が、組織としての強みを積極的に確保することを通じて、組織能力を基盤とした差別化を実現するための機能として、組織開発は位置づけられる。実際、前述の多くの企業で、組織開発が重要だと位置づけられている理由は実はここにあるのである。組織開発という概念は、出発点の一体感や組織としてのコミュニケーションの目指した動きから、組織による差別化のための経営活動へと進化しつつある。