フリップに料金を記載するのは戦略的なのか

①〜⑤の二項対立が、「リピート客狙い」と仮定すれば、すっきりする。何も違和感なく、戦略通りだ。ふむふむ。

駅前に立っている「ガールズバー」の子は、そういう狙いだったわけかぁ……と、思ったはず。しかし、もう一つの二項対立が残っている。実はここからが、このお話の面白いところ。

残っているのは「ガールズバーの子が持っているフリップ」である。今度、駅前で見かけたら注意深く見てもらいたいが、フリップには「料金」が書いてある。「飲み放題2000円」とか、明朗会計と言わんばかりの内容だ。

ここでは料金が記載されているとしたが、「女の子の名前」を書く場合もある。ということで、フリップの内容も二項対立にしよう。

⑥「飲み放題2000円」「今日いる女の子の名前」

あれれ? おかしいぞ。フリップの内容が「料金」だと辻褄が合わない。「リピート客狙い」であれば、リピート客に対する「需要喚起」=“あそこのガールズバーにもう一回行ってみるか”が論点だから、フリップの内容は「今日いる女の子の名前」でないと、あかんやん。

本来であれば、「今日いる女の子の名前」でなければいけないのに……。いや、待てよ、今度は逆の「辻褄思考」をしてみよう。仮に⑥「飲み放題2000円」=「料金」だとすると、その狙いは安さに惹かれてやってくる「新規顧客」だ。

すると、他の二項対立は自ずと決まってくる。新規なのだから、「携帯を見ながら、やる気がない」姿勢では意味がない。

「二項対立思考」を使えばビジネスの構造が見えている

①「勧誘しようと、元気よく」新規顧客に声をかけ、当然、②「めっちゃ、可愛い子」で、一回来てもらうための⑤「客寄せパンダ的、一時的な子」が求められる。ダラダラやっても新規は来ないから、③「短期決戦(ぱっと)」やん。

つまり、フリップの内容が「料金」だと、最初の5つの二項対立はすべて「逆」が正しい戦略に見えてくる。まとめると「リピート客狙い」なら、フリップのみが間違った戦術で、「新規顧客狙い」なら、すべて裏目の戦術やん、と、なるわけだ。

高松智史『変える技術、考える技術』(実業之日本社)
高松智史『変える技術、考える技術』(実業之日本社)

今回のガールズバーの例では、「集客のための目的と戦術があべこべやん」という「構造」が明らかになった。面白くない? 「駅前にいるガーズルバーの女の子」という題材でも、二項対立という思考を使うだけで、これだけ深く考えられる。

もし、ガールズバーを僕がコンサルするとすれば、この二項対立を1、2枚のパワーポイントのスライドにして、議論を始めるだろう。そうすれば、「新しい視点」や「ビジネス構造」をつまびらかにでき、濃い議論ができる。

その複雑な世界を、二項対立で紐解くと、面白いくらい「単純」な構造がお目見えする。ぜひ、二項対立を意識して、使ってみてほしい。

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