筆者が中国を初めて訪れた90年代初期は、フリーライターという身分さえもなく、この職業をどう説明していいか困ったこともあった。それだけに、“スマホ1つで一獲千金”というフリーランサーの出現は隔世の感がある。そして昨年、フリーランサーの範疇にあった「ライブ配信者」が、正規の職業として突如として格上げされたわけだが、このことは多くの中国人の耳目を集めた。

新しい産業が生まれれば新しい職種が生まれる“スピーディーな中国”において、“新手の職種”が次々と創出されるのはむしろ自然なことではあるが、話はそれで終わらない。「ライバーの出現」と最近増加している「中国の大卒者の失業」は、実は底辺でつながっているのだ。

卒業生の4割が「仕事がない」状態

6月の中国は卒業シーズンに当たる。大学や専門学校の高等教育機関を卒業する人数は、過去3年で増加傾向にあり、834万人(2019年)、874万人(2020年)に続き、2021年は909万人が卒業した。南京大学の学長である呂建氏は「909万人は過去最高だが、これに留学帰国者を加えると、就職を必要とする卒業生は1000万人を超える」とコメントした。

卒業式での卒業帽の後ろ姿
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです

しかし、近年の中国はGDP成長率が鈍化傾向にある。世界的に拡大したコロナ禍で先行きの不透明感が高まり、雇用を削減する企業も少なくない。特に新入社員の採用には消極的だ。中国では以前から「卒業すると失業する」といった皮肉が合言葉のように繰り返されてきたが、これに追い打ちをかける事態となっている。一説によれば、909万人の卒業生のうち4割が未就業だという。

しかし、まったく仕事がないわけではない。日本の4年制大学を卒業した北京在住の謝小秋さん(仮名)は帰国後に地元企業に就職した。生存競争の激しい中国で、学歴にはくをつけようとする学生が修士や博士課程に進学するケースは近年珍しくなくなったが、謝さんは進学をしなかった。

ラクして稼ぎたい「横たわり族」が増えている

筆者は謝さんのその後を見守っていたが、案の定、彼女はわずか数カ月で「勤務時間が長い上、給料が低くて疲れきっている、もう辞めたい」と音を上げた。日本の4年制大学を卒業しても理想とする仕事には就けないようなのだ。

かつてから中国では労使間のミスマッチが激しかったが、最近ますます噛み合わなくなっている。近年の大卒者は飯のタネを探すのではなく、“黄金の飯のタネ”を探そうとしている――こんな分析を掲載する中国メディアもあるように、背景には90后(90年代生まれ)世代に共通する「ラクして高給を得たい」という労働観がある。