日本はIOCから賠償請求される?

もはや「コロナに打ち勝つ」どころか、「安全・安心な大会を実現」さえも危ぶまれている東京五輪。開幕まで10週間を切る中、東京都をはじめ全国各地は連日のように過去最多の新型コロナ感染者数を更新している。

東京五輪・パラリンピック組織委員会の5者協議後の記者会見に臨む橋本聖子会長(右)と武藤敏郎CEO(2021年4月28日、日本・東京)。
写真=EPA/時事通信フォト
東京五輪・パラリンピック組織委員会の5者協議後の記者会見に臨む橋本聖子会長(右)と武藤敏郎CEO(2021年4月28日、日本・東京)。

客観的に見て、2020年春に東京五輪・パラリンピックの開催延期を決めた頃と比べ、5月に入ってからの感染状況は明らかに悪化している。国民の6割以上が五輪の中止を求めているにもかかわらず、依然として、国際オリンピック委員会(IOC)からも東京五輪大会組織委員会からも「延期や中止」に向かう声がまるで聞こえてこない。

こうした状況のさなか、組織委の武藤敏郎事務総長は5月13日に行われた会見で「仮に東京大会が中止となった場合、IOCから賠償請求されるかどうか」という記者の質問に対し、「そういう質問が増えているが、考えたことはない。あるのかどうかも、ちょっと見当つかない」との見解を示した。

この見解を報じた毎日新聞の記事を読み進めていくと、こんな記述がある。「東京都などとIOCは開催都市契約を結んでいるが、大会中止などの決定はIOCが単独で判断できると規定」「中止となってもIOCは損害賠償や補償の責任を負わない仕組み」だというのだ。未曾有の事態にもなおIOCが開催に突き進むのには、こうした事情がある。

来日見送りに「いよいよ中止か」との声もあるが…

17日に予定されていたバッハIOC会長の来日は、緊急事態宣言がゴールデンウィーク(GW)前に発令されるやいなや見送りが決まった。五輪中止を求める人々の中には「これで五輪もいよいよ中止決定か」と色めきたつ声も聞かれたが、その後7月に来日することが決まった。

そうした中、GWには札幌市で外国人選手も参加するマラソンテスト大会、その後東京の国立競技場では陸上のテスト大会がそれぞれ実施された。この際、視察に訪れていたのはワールドアスレティックス(世界陸連)のセバスチャン・コー会長だった。IOC委員の要職にある同氏は、もともとは「過去、最も順調かつもうかった夏季五輪」と評される2012年ロンドン五輪の組織委委員長だ。つまり、成功した五輪の実践者として、「下見の人選」としてはバッハ会長よりも適任と見るべきだろう。