強いスポーツチームをつくるためには、なにをすればいいのか。スポーツデータ分析の専門家である森本美行氏は「人件費を多くかけたチームが必ずしも強くなるとは限らない。手持ち資金を勝利のためにどれだけ賢く使うかが重要だ。Jリーグでの事例を紹介しよう」という――。

※本稿は、森本美行『アナリティックマインド』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。

夕暮れのサッカー場に置かれたボール
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スポーツビジネスの“お金”は勝利を買うためのもの

誰かが答えを出すだろう、すでに答えは出ているだろうと他人に頼ってはいけない。どこかの有名選手が太鼓判を押しているからといってそれが正しいとは限らない――。

これは『マネーボール』の主人公になったMLBアスレチックスのGMビリー・ビーンによる野球の現場での言葉ではあるが、同時に野球界に限った考え方でもない。対象が何であれ、勝利を目指すものにとって必要な考え方だ。

勝利のために本当に必要なプレーをしている選手が必ずしも正しい評価を受けていないと考えた野球研究家のビル・ジェームズがセイバーメトリクスを考え、ビリーがそれを実践し結果を出したことにより、何が重要なのかを人々が理解し始めた。重要なのは、資金をどれだけ持っているか(=ヤンキースやレッドソックス)ではなく、どれだけ有効に活用できるかということだとわかってきたのだ。

野球、サッカー、バスケットボール等のプロスポーツのビジネスを行う上で、お金は選手を買うのではなく勝利を買うために使われるべきだ。「マネーボール」は、重要なのは単に人件費の大きさではなく、手持ち資金をどれだけ勝利という目的のために賢く使えるか、即ち、ROI(Return on Investment=投資利益率)という考え方が大事なのだということを教えてくれた。