「非常に紛らわしい発表だった」と不快感を示した武田大臣

利用者の側も料金を調べるのがあまりにも面倒だったことから、乗り換えを諦めてしまい、結果として各社は利用者を囲い込むことが出来ていた。

料金そのものに加え、不透明性も指摘されるという現実があったからこそ、ドコモは定額料金にすべてが含まれるシンプルなプランを用意し、ソフトバンクもそれに倣った。ところが、KDDIのプランは利用者に複数の選択肢を提示しているものの、一見すると最安値に見えるので、詳細を知った一部の利用者は不快に感じる可能性がある。

実際、今回の新プランについて武田総務相は15日、「非常に紛らわしい発表だった」「国民に対してあたかも一番安いと思わせるやり方」と露骨に不快感を示した。料金に対する権限を持たない政府が、ここまでの発言を行うのは少々問題だと筆者は考えるが、それはともかくとして、武田氏と同じ感想を持つ利用者は一定数存在するだろう(武田氏はその後、「料金プランに対して指摘したつもりはない」と発言について釈明)。

ドコモが思い切ったプランを出し、ソフトバンクが利用者の流出を防ぐ対抗プランを用意しているという現実を考えた場合、KDDIにとっては、同じプランを出して現状維持を図るか、競合2社を超えるプランを出して一気にシェアを取りに行くのか、そのどちらかを選ぶべきだった。

ところがKDDIはそのどちらも選ばず、利用者に対する見せ方という点では、他の2社よりも消極的なプランを出してしまった。

では、一連の動きを受けて、今後、3社の争いはどのように展開するのだろうか。

現状では圧倒的に有利なドコモ

最初に押さえておく必要があるのは、ドコモは設備という点で圧倒的に有利な立場にあるという現実である。

ドコモ
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ドコモが全国に設置している基地局数は約38万カ所と、KDDI(約28万カ所)、ソフトバンク(約34万カ所)を圧倒している。1契約者あたりのトラフィック量(データ通信)を比較すると、ドコモはKDDIの6割、ソフトバンクの半分しかなく、ドコモは回線に十分な余力を残している。

また、NTTの完全子会社になったことでドコモは上場を廃止しており、単体の業績については考慮する必要がなくなった。NTTグループ全体として利益が上がればよいので、上場企業だった時代と比較すると経営の自由度は増す。

つまり、値引き合戦というある種の消耗戦においては、そもそもドコモが有利な立ち位置であり、他社は何らかの差別化をしないと対抗できない。ソフトバンクはドコモと同じ料金水準を維持することで顧客流出を防ぎ、LINEとヤフーというネットサービスを切り札に若年層を取り込む戦略であることは明白だ。