会社や事業自体がなくなってしまう可能性も

今や世界経済を牛耳っているのは、あなたが働き始めたころには存在していなかったGAFAなどの新興企業です。日本の上場企業の中にも過去10年ほどで躍進した新興企業が続々と増えています。これから10年の間に登場するスタートアップがまったく新しい事業で市場を支配してしまう可能性もあり、自社のサービスのニーズが一気になくなってしまうことだって考えられます。

その結果、10年の間にあなたの会社が規模縮小を迫られ、大規模なリストラを進めるかもしれませんし、他社に吸収・合併されてしまうかもしれません。そのときに現行の雇用延長制度がそのまま存続している保証もありません。もちろん会社や事業自体がなくなってしまう可能性だってあります。

私のもとには最近、「新卒入社した会社で所属する事業部ごと他社に譲渡されてしまった。この年で転職は考えられないので急きょ独立を考えている」といった声が届いています。それも一人や二人ではありません。

公園の滑り台に座りはにかむビジネスマン
写真=iStock.com/kumikomini
※写真はイメージです

このような十分起こりうる変化を想定すると、これからの時代、稼ぐ先は複数に分散しておいたほうが、リスクは抑えられます。逆に、1社に依存してしまうと、その会社が倒れた時点であなたも共倒れになってしまいます。だから、雇用延長は経験を積んできたミドルにとってローリスクに見えて、実はハイリスクな選択肢なのです。

自分の人生のハンドルを握られているストレス

また、1社に依存した場合、どんな仕事をするか、自分の時間をどう使うかといった人生の重要事項について、会社や上司にハンドルを握られたままということになります。このストレスがどれほど大きいかは、今さら私が説明するまでもなく、皆さん長いサラリーマン生活の中で痛感してきたはずです。

雇用延長を選択した場合、本人が望んでいない事務作業やそれに類する閑職に回されることも決して少なくありません。「こんな仕事をしたいわけではなかったのに……」というストレスが続く可能性もあります。年下の上司の下で働くことにどこかで不満を感じる人もいるでしょう。

「この年齢だし、雇ってもらえているだけでもありがたいと思わないといけないのかもな……」というネガティブな心理が高まり、築き上げてきたキャリアに対するプライドの維持が難しくなって、メンタルにダメージを受ける人も少なくありません。

もちろん、「もう課長や部長ではないのだから」と気持ちを切り替えて、新たな境遇・立場に適応していく人もいるでしょう。しかし、約40年キャリアを重ねてきたシニアにとって、それは現時点で想像するほど容易なことではありません。

経験値豊富なミドルならではの、堅実な独立スタイル

そんななかで私が皆さんに提案したいのは、人生を懸けた無謀な冒険ではなく、仮に失敗したとしてもダメージを最小限に抑え、やり直すこともできる「ローリスク独立」です。それは、ずばり「ひとり会社」の設立です。ひとり会社とはいえ、社長になることをあなたに提案します。