外資系化学品メーカーや専門商社などさまざまな企業で40年以上企業経営に携わってきたSNAコーチング協会の住友氏は、セッション1の専任コーチを担当した。

「伊藤さんの一番の要望は、社長としての心構え、マインドセットの部分でした。そこで『経営基盤の整備』という形でセッション1を手厚くして、リーダーシップのあり方やグローバル・リーダーとしての心構え、人事や後継者育成におけるトップマネジメントのスキームといったテーマに時間を割きました。社長が勉強しないでどうして会社が健全に経営できるのかということで、各セッションでベテランの元経営者からガンガン叩き込まれるわけですから、伊藤さんも大変だったと思います。その分、プログラムを終えて、大変成長されたように感じました」

伊藤氏自身はECを受けた感触をどう感じたのだろうか。

「すべてが新鮮でした。専任コーチの皆さんは経営経験が豊富な方々ばかり。私も必死でしたから、妙なプライドや壁をつくったらもったいないと思って、身を預けることができました。こんな状況のときにどう対応すべきか、かなり具体的な事例を私のほうからもあれこれと質問しましたが、皆さん、ご自分の経験を交えて親切にアドバイスしてくださいました。一生懸命に取っていたメモは今も持っています。読み返すと懐かしいですよ」

時に食事に誘うなどして仕事を離れて気分転換させたり、周囲から異を唱えられる機会の少ないエグゼクティブに率直な意見をぶつけて、客観的な視点を取り戻させるのもコーチの重要な役割だ。住友氏曰く、「コーチとは信頼を裏切らない熱烈な応援団長」。

「応援団長というか、怖いオヤジというか……。住友さんは平気で叱る。私が、あれがうまくいかない、これがダメとグチグチこぼしていたら、『そうやって悩んでいるあなたが1番ダメだ』と叱られた。それがまたいいんですね」