最後の言葉
師匠からかけられた最後の言葉は「ちゃんと飯は食っているのか?」
板谷先生は47歳という若さで、くも膜下出血のため亡くなりました。私が19歳の時で、これから30年も40年も付き合っていけると思っていたのに……。師匠は若い時に少食だった私を心配していました。口癖は「どんどん食ってバンバン指せ」。一言でいえばあまり思い悩むな、たくさん食べてたくさん将棋をやれ、と。
そして師匠は将棋と、将棋のファンをとても愛していました。師匠がお元気だった「昭和」と、今の「令和」では将棋のファン層も、将棋に対する世間の評価や位置付けも変わりましたが、藤井二冠やそのほかの弟子とともに将棋の楽しさを少しでもみなさんに伝えていきたい。板谷師匠、私、藤井と、血脈とは異なる“師弟関係”で遺志を受け継いでいきたいのです。
(文=笹井恵里子 撮影=今井一詞 写真=時事通信フォト )