売上台帳を適当に作って給付金を計200万円もらった

白色申告の個人事業者であるにもかかわらず、青色申告同様に前年同月比による計算で申請し、問題なく給付されたという話を、筆者もいくつも聞いている。

一方、7月27日現在の申請フォームは、「確定申告の種類」の項目で「白色申告」を選ぶと、「売上減少の対象月の前年度売上」の入力スペースが塗りつぶされるようになっており、「年間事業収入」の月平均が自動で計算されるように変更されている。

青色申告の場合と、白色申告の場合

「対象月×12」を前年の年間事業収入の月平均から引くのか、前年同月の売上から引くのかによって、受給額が大きく異なったり、受給の可否が分かれたりすることもあるはずで、申請フォームの修正によって負の影響を受ける申請者にとっては不公平感もあるだろう。持続化給付金事業のずさんぶりを示す一例だ。

また、野中さんの場合、自分名義でも妻名義でもともに4月を対象月として申請したというが、売上台帳の準備は極めて簡単だったという。

「今年の4月の売上をもとに計算してみたところ、満額の100万円が支給されることがわかったので、そうしました。妻については、今年は再び専従者に戻ったことにするので4月も事業収入はゼロ。やはり満額100万円が支給される計算になります。

ちなみに売上台帳は、提出義務はないものの作成して保管しておく義務はあるそうですが、これまで店ではまったくつけていませんでした。今回、給付金申請に必要と知って、ネット上で配布されていた、無料のエクセルのひな形を使って適当に作りました」

不正発覚におびえるが「みんなやっている」

こうして用意した両名義の確定申告書の控えと、適当に作ったという売上台帳で、5月25日に自身と妻の持続化給付金をオンライン申請した野中さんだが、現在までに給付されたのは自身の名義での申請についてのみ。事業収入を偽装した妻の名義の申請については、6月21日の時点ではまだ給付されていないという。

「やはり、専従者だった事業主の妻が突然業務委託の外注スタッフになったことが怪しまれているのでしょうか……」

野中さんは、そう不正発覚におびえる一方、「グレーな給付金申請なんて、みんなやっていることですから」とも強弁する。

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「同じ飲食店でもレストランなんかだと、居酒屋とは違って夜8時までの営業でもわりと客が来る。それに、もともとランチ営業もしていたりしますし、新型コロナでデリバリーや持ち帰りの需要が増えたところもある。持続化給付金の基準となる、『売上高前年同月比50%減』までいかない飲食店も多いと思いますよ。でも、この界隈の零細飲食店で、持続化給付金を申請しないというところは聞いたことがない。みんなうまいことやってますよ。

飲食業なんて、現金で支払いを受けたものに関しては、いつ発生した売上なのか証拠が残りませんから。例えば5月の売上の一部を3月と6月の売上として振り分けることで、5月の売上を低くすることができ、晴れて持続化給付金を申請することができます」

野中さんによると、こうした数々の給付金獲得スキームは、近隣の飲食業関係者の間で広く共有されていたという。

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