「後に仕掛けて失敗するのは恥。先に仕掛けて失敗することは名誉だと思っているから」
目の前にいるのは武士なのか。そう勘違いしそうになってしまうほどの高潔さだ。
人生を畑仕事に例える
堀氏は自身の人生を畑仕事に例える。
「今回、ファウンダー最高顧問を退いたのが、人生の四毛作目。戦前の体験が一毛作目、音楽の世界に入って還暦までが二毛作目。還暦からこれまでが三毛作目だ」
三毛作目のテーマは、「違う自分になる」で、「女房以外はすべて変えた」という徹底っぷり。通勤も徒歩に変えたという。
「自分を欺くくらいでないと違う自分にはなれませんから。それと、僕は目標がないと生きていけないんです」
御年87となった今も、その方針に変わりはないようだ。
「四毛作目のテーマは『チャレンジ』。働き出してから初めて仕事を離れることになります。仕事から離れると寿命を縮めるぞと脅かしてくるやつもいる。でも、天下の素浪人としてどう生きられるのか挑戦してみようと」
激動の時代を生き抜いてきた力強さと人を惹きつける柔和な表情を併せ持つ堀氏。戦中戦後の体験談や自身が作り上げたホリプロを通してその半生を描いたのが本著だ。堀さん自身は「用がなくても会いたい」と思わせる人間的な魅力を持っていた。
堀 威夫
1932年、横浜市生まれ。明治大学商学部卒業。学生時代からバンドを始め、人気を博す。60年にホリプロダクション(現・ホリプロ)を設立、和田アキ子、石川さゆり、森昌子、山口百恵、榊原郁恵ら数々のスターを発掘・育成。
1932年、横浜市生まれ。明治大学商学部卒業。学生時代からバンドを始め、人気を博す。60年にホリプロダクション(現・ホリプロ)を設立、和田アキ子、石川さゆり、森昌子、山口百恵、榊原郁恵ら数々のスターを発掘・育成。
(撮影=石橋素幸)