【ここがクリエイティブ
  @一橋大学大学院商学研究科教授 守島基博】

キーワードは「ムリ」だと思います。今は企業がムリな目標を立てることじたいなくなってきましたね。日本企業が本当にムリしてきたのは高度成長期でしょう。

ただ、どういう無理難題をつくるかはロジカルに考えなきゃいけない。西田社長はそこはきちんとやっていらっしゃると思いますが、やったうえで「ムリな目標を立てる」ことじたいが狙いなのだと思います。つまり、組織をバラバラにしておいて、さらにコラボレーション(共同作業)をしなさい、という組織論からいうと絶対にムリな話をわざわざ押し付けた、ということです。ムリな目標を立てて、現場が「何とかしよう」とする中から解決策が出てくる。その解決策にもいろんなタイプがあるから、それを今度は戦略で整理して組み直し、最終的なプランにしていく。

いわば「右脳(ムリな目標)と左脳(戦略)の行き来」が重要なんです。

実は、シックスシグマも本来は「ムリな目標の立て方」がポイントなんです。あれだけのスピードで相当の効率化を進めるのですから、「ムリな目標」という点では思想的に全く同じ。MIの成果が見えなかったのは、「ムリ」の立て方がぶれていた、もしくは会社に合わなかったのだと思います。

i cube(アイキューブ)が現時点で順調に進んでいるのは、1つにはMIによって「ムリ」な目標への耐性がついていたからでしょう。また、戦略を立てる際の共通言語が現場に浸透していて、カンパニー間の意思の疎通がうまくいっていることも一因だと思います。

(小川 聡=撮影)