金融市場は人間心理を反映するものです。そこに関わる一人一人の欲望や不安や惰性によって動くといってもいい。誰かがこの年齢で新しい職を見つけるのは無理だとか、主婦だから何をしても無駄だと思い始めると、各家庭の中で負に向かう流れが起き、やがて大きな潮流になって市場に投影されてしまう。そして、さらに負に傾いた市場の影響が各家庭に及ぶという負のスパイラルが増大してしまうものです。

だから、会社が危ないという問題に直面しても、一時しのぎの手を打つのではなく、視野を広げて問題の本質に迫ることが、そこで沈まずにやがて浮上するためには不可欠なのです。

会社の危機に際して、本当に悩んでいるのは当事者であるご主人のほうです。ですから、本人を詰問するといった不安をあおる行動を慎み、心理面をサポートすることが何より大切な気がします。家族に心配をかけまいと黙っているのかもしれませんが、家族なのに腹を割って話し合えないのは寂しいですよね。プライドが邪魔して話せないなら、プライドを尊重しつつ少しずつ心を開いてもらうことが必要なのではないでしょうか。

私自身は普段から何かと夫と話し合ってきました。もしこういった状況に直面したら、まず話を聞くのが自分の役目ではないかと思っています。2人で話し合った結果、最後にどうするかは夫自身の判断に任せるでしょう。

私にも短いながら専業主婦の経験がありますが、主婦の方もこれをきっかけに外の世界に目を向けてみると新たな発見があるのではないかと思います。働きに出てもいいでしょうし、趣味を極めればそれが将来的に仕事につながるかもしれません。家計が危ないから働くというより、自分が本当はどうしたいのか、家族としてどう乗り越えるか、一度じっくり考えてみることが、将来を切り開くことにつながっていくのではないでしょうか。

(石田純子=構成 澁谷高晴=撮影)