ポストコロナの時代には、個人で経済や金融を学ぶことが重要になる。大和総研の熊谷亮丸専務調査本部長は「経済や相場のシナリオを立てて、それを事後的に検証するといい。専門家の見解を『お告げ』のように信じる人もいるが、本当に大切なのは『結果』ではなく、判断に至る『ロジック』だ」という——。

※本稿は、熊谷亮丸著『ポストコロナの経済学 8つの構造変化のなかで日本人はどう生きるべきか?』(日経BP)の一部を加筆・再編集したものです。

財務チャートと勉強する手元
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リベラルアーツ教育縮小論の誤り

本連載の最後となる今回は、ポストコロナ時代に個人がどう生きるべきか、という点を論じたい。ここでは、特に、リベラルアーツ(一般教養。自由に生きるための知恵や手段)を学ぶことと、不透明な時代のなかで、経済や金融について知見を深めることの重要性を強調したい。

近年、わが国では大学のリベラルアーツをめぐる議論が迷走しており、「リベラルアーツ教育を縮小し、実践教育を重視するべきだ」との主張が勢いを増している。2015年6月には下村博文文部科学大臣(当時)が、全国の国立大学法人に対して、中期目標・中期計画の策定に当たり、教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院の廃止や転換に取り組むことなどを求める通知を出したことも、こうした議論に拍車をかけた。

しかしながら、筆者は、ポストコロナの時代に、わが国ではリベラルアーツの重要性が高まることはあれ、低下することはあり得ないと確信している。変化の速い現代では、実用的な知識や技術はすぐに陳腐化する。その意味で、今ほどわが国の歴史・文化・伝統を踏まえた、深みのある議論が求められている時代はない。