ブルーインパルスを紹介するフワッとした言葉

なぜ今、航空自衛隊はブルーインパルスを飛ばしたのか。医療従事者への「感謝と敬意」を超え、そして「壮観」「かっこいい」の先を考えてみたい。以下、航空自衛隊公式ホームページのブルーインパルスについての記述である。

次から次へ繰り広げられる驚異のパフォーマンスは、初めて観る人にとっては驚きの連続に違いありません。地上は大きな感動と歓喜の声に包まれます。その美しく雄大、華麗にして精密なフライトは、内外から高い評価を得てきました。これからもブルーインパルスは、「創造への挑戦」を合言葉に、より多くの人に「夢・感動」を感じていただける展示飛行を求め続けていきます。

「驚異のパフォーマンス」「感動と歓喜の声」「美しく雄大」「華麗にして精密」……スペクタクル性を象徴する語のオンパレードだ。しかし、「創造への挑戦」や「夢・感動」については、何かを語っているようでいて何も語っていない。だが、それこそが重要な点だ。

「スペクタクル性の感動」を人々に与えようとする側は、多くの場合、このようにフワッとした「言葉」を用いる。「とにかく見て! 感動するから」というのだ。

自衛隊と広報との離れがたさ

他方で、これは自衛隊の広報の困難さとも結びついている。

自衛隊は戦後、その存在は「宙づり」状態のまま、それゆえに存在意義を問われ続けることで、自己アイデンティティを災害救助・社会奉仕活動によって培ってきた。これは、歴史学者アーロン・スキャブランド「『愛される自衛隊』になるために 戦後日本社会への受容に向けて」(田中雅一編『軍隊の文化人類学』所収)に詳しい。なかでも本稿に深く関わるのは、「音」や「視覚」を通じた広報活動、つまり自衛隊コンサートや航空ショーなどの一般市民向けのイベントだろう。スキャブランドは、こう書く。

北部方面隊の士官たちは、できるかぎり多くの人々の興味を引こうと努めた。彼らは、スペクタクルの力を理解していた。(中略)幸運にも、自衛隊は年齢を問わず人々の興味を引き、目を楽しませるような、設備をたくさん所有していた。