コロナ第2波で「正社員リストラ」の嵐が吹き荒れる

4月20日、経団連と労働組合の連合は「雇用維持」を優先することを確認し、経団連の中西宏明会長も会員企業に雇用維持を呼びかけている。それでも人員削減や採用の抑制などについて「必要」と答えた企業は21.4%もあった。具体的には「従業員の一時帰休」が66.7%、「中途採用を減らす」が51.9%。

一時帰休に関しては、すでに、「雇用の維持を目的とする雇用調整助成金の申請を活用する・検討する企業」が主要企業98社中50社に上っている(『日本経済新聞』5月27日付朝刊)。

今後、大企業を中心に正社員の大量の休業者が発生すると思われる。それでも持ちこたえられなければ、いよいよ正社員のリストラが始まる。

本格的なリストラが始まるのか、起こるとすればいつ頃になるのか。すでに新規の中途採用を中止したという建設業の人事部長はこう語る。

「相次ぐ工事の中断や新規の発注の低迷で業績が落ち込んでいます。もっと人がほしいという状態から恐ろしいぐらいに状況がガラリと変わり、契約社員については更新するかどうかを検討している。正社員については緊急事態宣言が解除されても、自粛ムードが続き、夏から秋にかけて感染拡大の第2波がきて収束しない状況が続けば雇用調整もあり得るだろう。あるいは来年開催の東京オリンピックが完全に中止になり、工事が止まれば正社員のリストラがさらに拡大する恐れがある」

頭の痛いビジネスマン
写真=iStock.com/kk-istock
※写真はイメージです

「東京五輪中止」ならリストラの規模は拡大する

つまり、第2波の感染拡大がリストラの引き金になり、東京オリンピックの中止でさらに拍車がかかるということだ。

実際のリストラ計画は中期の経営見通しに基づいて事業に必要な適正人員を計算し、余剰とされる人員数を弾き出す。大企業のリストラは希望退職募集という形で実施されるが、内実は部門ごとにリストラ数を振り分け、部門長が退職勧奨を行うのが一般的だ。

リストラの対象者は人事評価結果を基準に行うが、よく知られているのが「社内失業者」と呼ばれる人たちだ。

社内失業者とは能力不足で見合った仕事を与えられていない人を指すが、文字通り余剰人員だ。

エン・ジャパンの「社内失業実態調査」(2020年2月19日~3月19日)によると、「社内失業者がいる」「社内失業者いる可能性がある」と回答した企業は29%。従業員1000人以上の企業では47%に上る。年代的には「50代」(61%)、「40代」(40%)が最も高い。

社内失業者の実数はどのくらいかはわからないが、内閣府が2011年7~9月に行った推計は465万人だった。約10年前の数字だが、アベノミクスの景気拡大期に人を増やした企業も多く、今でも相当数の社内失業者がいるのではないか。

実際に前出の建設業の人事部長は「この7~8年は業績も好調で人が足りないということで新卒・中途採用を増やしてきた。全体として社員数が増えているので事業が縮小すれば余剰人員が出るのは確実」と語る。