「ジングル」を事務次官と官房長が演奏、大臣が名誉編集長

大臣を名誉編集長とし、各動画の冒頭で流れるジングルは末松広行事務次官がキーボード、枝元真徹官房長がギターを演奏し、職員がタイトルロールを歌う様子を事務次官室で収録。ロゴとポスターは黄色と赤を基調に「爆発しているイメージ」で作成。動画制作も全て職員が担当、広告代理店など「プロ」は入らない「手作り感」が特徴でもある。

スタートの1月7日から1日1本のペースで発信。「タガヤセ」やTASOGAREのほか、お茶に造詣の深い職員が省内で抹茶を点てて振る舞う、花き業界から出向している職員が「花王子」として花の魅力を紹介する、パンダの着ぐるみを頭に付けた女性職員が終業後に公園に行き、一人でピクニックをするなど、「何でもあり」の様相だ。

「このままでは農水省はダメになる」お堅い役所の強い危機感

農水省は、「霞が関の中でも最もお堅い役所」とされてきた。過疎化と高齢化が加速し、保守的な傾向が強まるばかりの関連業界を束ねきれず、農協改革など戦後農政の抜本的見直しも遅々として進まない。

省内には「このままでは農水省はダメになる」という強い危機感があった。元次官が引きこもり状態にあった息子を殺害したという事件も無関係ではなかったろう。

その中で「BUZZ MAFF」が「クリーンヒット」を飛ばしたのは、江藤農水相のトップダウンのアイデアを、末松事務次官以下の幹部陣が支え、省をあげて実現させる体制を築いた点にある。

末松次官は、経済産業省との人事交流で局長として出向した後に農水省次官に昇格した異例の経歴を持ち、古い慣習にとらわれない行動派とされる。

「農業従事者は全国にいるが高齢化が進み、われわれの方針が届いていないという焦りがずっとあった。ウェブやネットも見ていない方々が多い。それでも伝えるにはどうすればよいのか。広報室として見直しを検討していたところで大臣のお話をいただき、よい機会と考えた」と広報室の安川徹室長は言う。

ハンコと稟議を「すっ飛ばす」、あくまで「業務」

スピード感を重視、「BUZZ MAFF」は大臣直轄とし、中間管理職の「ハンコと稟議」をすっ飛ばす形をとった。大臣からは「(途中で幹部に)止めさせるな」の指示があったという。

制作は時間外でなく、業務の一環と位置づけ出張も許可。著作権など権利関係を、広報室が業者に委託してチェックし、公開している。

問い合わせがあった官公庁や自治体で、同じように進めている組織はまだないようだ。トップダウンの仕組みづくりが難しいとみられ、代わりに「一緒に何かやれないか」という問い合わせが増加、「タガヤセキュウシュウ」にも九州圏内の自治体から複数の依頼がある。

「もちろん、どんどん協力させていただきたいです」(安川室長)。過去の農水相経験者からは「うちの地元のアレも取り上げてよ」といった内々の依頼もあるとか。